第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)
「現地合流任務なら、ある程度の情報は集めとけってんだ」
「マオサさんも、まだ教団に入り立てだし。きっと慣れない現地任務で色々と追われてたんだよ。外で情報のまとめとか事務作業入ると大変だからね」
「だからってなんで五日も毎日毎日殺風景な所で…はぁ」
「任務地、何処だったんだっけ?」
「ディリ」
「でぃり?何処の国?」
「東ティモールだ」
「………私、行った憶えないかも」
「行ってもなんもねぇぞ。人と大地と海だけだ」
どうやら話を聞くに、そののんびりとした大地で五日間ものんびり過ごしたことが、神田の神経を苛立たせたらしい。
エクソシストとしてはある意味、仕事に真っ直ぐな神田のこと。
イノセンスの情報らしい情報もなく、AKUMAと遭遇する訳でもなく、成果の見えない日々を強いられたことがストレスだったようだ。
「(確かにユウらしいけど…)でも、そんな任務あったでしょ、私との時も」
「…あったか?んなもん」
「あったよ。えーっとあれは…ギニア!まだアレンの方舟が乗り物になる前の時。二人で行った任務」
「………」
「あ。憶えてないね」
「っ…二人の任務なんて腐る程あっただろ。いちいち憶えてねぇよっ」
「私は憶えてるよ?だって流行り病にかかっちゃった任務だったから」
どことなく焦りを見せる神田の表情は珍しいものだ。
記憶にないことには不満もなく、雪は神田らしいと笑った。
「だから思うように体が動かなくて、情報収集もいつもより時間がかかっちゃって…」
「…お前が真っ赤なタコみたいな顔で任務こなしたやつか」
「あ、思い出した?というかタコって」
「そうだろ。足取りもタコみたいにぐにゃぐにゃで今にもぶっ倒れそうな癖に、弱音一つ出さずに任務こなしてただろ」
「だって病気だって言ってもユウは休ませてなんてくれなかったでしょ。寧ろ邪魔者扱いされてその場に置いていかれるのは目に見えてたし。それなら黙って任務に就いてた方がマシ」
「…そうだったか」
「そうだったよ。憶えてない?私、ユウに現地に置き去りにされたの、数回じゃないからね」
「………」
(あ。また焦ってる)
無言で目を逸らす神田にも、凡そ人らしい感情があるのだろう。
ギニア任務では露程にも感じられなかった感情だ。