• テキストサイズ

廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第4章 ◆入れ替わり事件簿(神田)



 その言葉は外見だけじゃなく、私の中身もしっかり見ていてくれてる証拠で。


「…私もだよ」


 熱くなる胸を抱えたまま、その手に自分の手を添えていた。

 私もそう。神田の外見だけに惹かれた訳じゃない。
 確かに近くで見ると、その美形は心臓に悪いけど。
 でも神田に惹かれたのは、きっと神田だったから。


「神田だから、今の想いを抱えられた」


 勿論、その外見も神田の魅力の一つだけど。
 でも今とは違う顔だったとしても、きっと私は神田を好きになったと思う。


 私のことを好きでいてくれているのか。
 そんなお昼に抱えていた一抹の不安が、嘘みたいに消えていることに気付く。
 例え姿が変わってしまっても、こうして私に気付いてくれて、ちゃんと私に想いを向けてくれてる。
 それを確かに実感することができたから。


「へへ、一緒だね」


 なんだか照れ臭くなって、つい緩い笑みを返す。
 するとすぐ目の前にある神田の黒い目が、またぱちりと瞬いた。
 今日はよく瞬くなぁ…その一瞬浮かべる、きょとんとした顔って貴重な気がする。
 アレンとは全然違う系統の顔だけど…ちょっと、可愛いかもしれない。


「…神田?」


 そんなことを考えながらついつい笑っていると、不意に顔に影がかかった。


「か、神田?」


 頬に添えられた手に僅かに力が入って、動きを制限される。
 そのまま近付いた顔は、唇が触れられそうな程に近い。

 ちょ、ちょっと待って。
 触ってもらうのは好きだけど。
 でも今はアレンの体だから、それは流石に…!


「待って、神田…っ」

「…なんもしねぇよ」


 慌てる私を止めたのは、冷静に落ち着いた声。
 そのままはぁと憂い混じりな溜息をついて、神田はこつりと私の額にその額を重ねた。

 ……何その憂い。
 今の姿じゃ色気半端ないから。

 …湯船の中なのもあって、本当に逆上せそうです。

/ 723ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp