第4章 ◆入れ替わり事件簿(神田)
その言葉は外見だけじゃなく、私の中身もしっかり見ていてくれてる証拠で。
「…私もだよ」
熱くなる胸を抱えたまま、その手に自分の手を添えていた。
私もそう。神田の外見だけに惹かれた訳じゃない。
確かに近くで見ると、その美形は心臓に悪いけど。
でも神田に惹かれたのは、きっと神田だったから。
「神田だから、今の想いを抱えられた」
勿論、その外見も神田の魅力の一つだけど。
でも今とは違う顔だったとしても、きっと私は神田を好きになったと思う。
私のことを好きでいてくれているのか。
そんなお昼に抱えていた一抹の不安が、嘘みたいに消えていることに気付く。
例え姿が変わってしまっても、こうして私に気付いてくれて、ちゃんと私に想いを向けてくれてる。
それを確かに実感することができたから。
「へへ、一緒だね」
なんだか照れ臭くなって、つい緩い笑みを返す。
するとすぐ目の前にある神田の黒い目が、またぱちりと瞬いた。
今日はよく瞬くなぁ…その一瞬浮かべる、きょとんとした顔って貴重な気がする。
アレンとは全然違う系統の顔だけど…ちょっと、可愛いかもしれない。
「…神田?」
そんなことを考えながらついつい笑っていると、不意に顔に影がかかった。
「か、神田?」
頬に添えられた手に僅かに力が入って、動きを制限される。
そのまま近付いた顔は、唇が触れられそうな程に近い。
ちょ、ちょっと待って。
触ってもらうのは好きだけど。
でも今はアレンの体だから、それは流石に…!
「待って、神田…っ」
「…なんもしねぇよ」
慌てる私を止めたのは、冷静に落ち着いた声。
そのままはぁと憂い混じりな溜息をついて、神田はこつりと私の額にその額を重ねた。
……何その憂い。
今の姿じゃ色気半端ないから。
…湯船の中なのもあって、本当に逆上せそうです。