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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第4章 ◆入れ替わり事件簿(神田)



「戻るまでお前、任務はどうすんだ」

「任務からは外すって室長に言われたから、一応大丈夫だけど…折角アレンの体だし。一度この体で任務をしてはみたいんだけどね」

「お前な…呑気過ぎるだろ」

「だって折角だし…あ、神田今度組み手付き合ってよ。今の体なら、また一本取れるかも」


 時々アレンと神田が組み手をしているところは、見たことある。
 剣術じゃ神田が勝るけど、体術は割と互角だった気がする。
 そんなアレンの体なら、また神田から一本取れるかもしれない。

 つい笑顔で誘えば、神田の眉間には皺が寄った。


「あれは負けじゃねぇ。卑怯な戦法取っただろ、お前」

「それも立派な戦術でしょ」

「モヤシの真似すんな」

「今はアレンですから」

「……」


 あ、眉間の皺が増えた。


「テメェ、その体になってなんか神経図太くなってねぇか」

「…そんなことないけど」


 嫌そうに吐き捨てる神田に、そうかなと考えてみる。
 そういえば…図太いというか、なんだろう……もしかしたら、浮かれてるのかも。
 なんとなくそんな気がする。

 原因はきっと、神田が私に気付いてくれたからだと思う。

 洞察力の凄さもあるけど、きっとそれは神田が私をちゃんと見ていてくれた証拠だから。
 だから嬉しくて、割と前向きになっているのかも。
 …うん、私って単純。


「…ありがとね、神田」

「あ? なんだよ急に」


 そんな気持ちでいると、素直な言葉は口から自然と零れていた。


「私のこと、ちゃんと見ていてくれて」


 視線を目の前の湯船から、隣に座る神田に向ける。
 そう素直な気持ちを口にして笑いかければ、神田の真っ黒なその目はぱちりと瞬いた。


「……」


 そして無言。


「…神田?」


 どうしたの、逆上せた?

 反応のない神田に首を傾げていると、不意にその顔はそっぽを向いた。
 そして溜息。

 え、何。

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