第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)
「待て雪!俺はまだ降参してねぇ!」
盛大に絡まれる中、跳ね起きたユウの罵声が耳に届いた。
負けず嫌いなユウのこと、これくらいで負けを認めないことはわかっていた。
でも先に言った通り、持久戦は不利。
長々相手をする気はない。
「一本取れたから私の勝ちでしょ。よって終了。解散。さ、汗流しに行こー」
「はぁ!?ふざけんな!」
「悔しいからって意固地になるなよ、神田」
「そうだぜ。お前だって散々勝ち逃げしてきた癖に」
「偶には負け犬の味を知れってんだ」
「さー風呂だ風呂!雪の背中流してやるよ、勝者への労いだ!」
「本当?やったーっ」
「何言ってんだッ一緒に風呂なんざ入れる訳ねぇだろ!そいつをよく見ろ!」
「…うん?私?」
「何言ってんだ?神田」
「入れるだろ。だって男だし」
「そうそう」
「どう見ても男だし」
「うんうん」
「男の中の男だろ」
「全くだ!」
さも当然のように頷く一同に、あのユウが一瞬押し黙る。
うん、皆間違ってない。
此処には性別上、清き汗を搔いた男しかいないんだから。
「っ…大体お前も何普通に受け入れてんだよ」
「え?何が?皆とお風呂?…楽しそう?」
「…本気で言ってんのか」
「? うん」
前に体の入れ替わったアレンだったら、見慣れない美男子の肉体に照れもしたけど。
この体は自分のものだし、生憎仲間達の裸は見慣れてるし。
どんな女がタイプだ夜のオカズはなんだ散々下ネタは聞かされ、好みのAVやら雑誌やらだって見せられてきた。
そんな仲間に今更恥じらいも何もない。
というか今更恥じらう方が恥ずかしい。
それに丸裸な訳じゃないし。
腰にタオルくらい巻いて入りますよ。
「じゃあ皆でお風呂───あ。」
「あ?」
「そう言えば、この後用事があったんだ…ごめん皆、私シャワー行くね」
「はあー!?」
「んだよそれ、つまんねーッ」
ブーブーと文句を上げる皆には悪いけど、譲れない先約を思い出してしまった。
そうだった、前々から約束してたのに忘れてた。
危ない危ない。
「んだよ用事って」
仏頂面で問い掛けてくるユウに、脱ぎっ放しにしていた上着を拾い上げてうーんと考える。
あれは強いて言うなら───
「デート?」
かな。