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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)



いつもはここで、伸ばした手はユウに届かず体は宙へと浮いていた。
けれど今日は、その"いつも"と違っていた。

女の時より長く伸びた腕は、届かなかったはずのユウの肩に届いた。
遠心力で投げ飛ばされる体を、咄嗟に肩を掴んで阻止する。



「!?」



珍しく目を見開くユウの顔を視界の端に、頭上で宙を舞った自身の体は半月を描いて地に着地。
そのまま残っている遠心力を利用して、ユウの体を捻り上げた。



「そぉらァッ!」



どこぞの某傀儡使いの罵声を借りて、捻り上げた体を背負い投げる。
女の私でも唯一誰にでも有効な投げ技だからよく使っていたけど、ユウ相手に効いた試しはない。
いつも力負けして、その体を床から離れさせることができなかったから。

今回もそう思っていたんだろう、そのユウの油断が勝機を生んだ。



「っな…!?」



ゴズとの組み手で確かな実感はあった。
あの巨体も投げ飛ばせたんだ、しっかり筋肉は付いていてもゴズより細身なユウを投げ飛ばせないはずがない。
宙に浮いたユウの長髪がふわりと靡く。
真っ赤な髪紐も混じって、なんだか優雅だなぁと感じながら重力に任せて床へと叩き付けた。

どしん!と背中から落ちたユウの見上げる目と、背負投げた状態で見下ろした私の目が合う。
ぱちり、とお互いに瞬きも忘れて呆然と見合った。

あれ………できた?



「……ュ」

「雪〜!!!!!!」

「おおおぉお!オレらの雪が勝ったァ!」

「マジかよぉおお!グッジョブ!」

「雪ー!!!!!」

「わブッ!」



口を開いた途端に、雪崩のように飛び込んできたファインダー仲間の筋肉に呑まれて沈んだ。
く、苦しい…!
筋肉が!分厚い!



「よくやった!俺らの溜まりに溜まった恨み辛みを…よくやった!!!!!」

「よーし!今夜は宴だな!」

「雪!お前もうそのまま男でいてもいいぞ!」

「はっはは!言えてる!」

「ち、ちょっと…皆、痛い…!痛いってっ」



大きな手に次から次へと頭を撫でられ背中を叩かれ肩を組まれる。
そんな皆の顔はオリンピックで優勝したってくらいに歓喜に溢れていた。

いや、うん。
そこまでユウへの恨み募ってたの…どんだけやられてたの。
気持ちはわかるけどね。
気持ちは。
うん。

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