第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)
「雪、これなんかどう?」
「…えっと、リナリーさん」
「何?」
「私今、男なんだけど…」
「うん。だからメンズ店に来てるでしょ?」
「そうだけど……まぁいいや。じゃあ試着するよ」
「いってらっしゃい♪」
落ち着いたジャズが流れる木目調の店内。
渡された服を手に試着室へ向かえば、笑顔のリナリーに送り出された。
修練後に入っていた用事は、リナリーとのショッピング。
二人きりだから、傍から見れば美少女とデートしてるようなものだ。
前にリナリーに街に連れ出されて人形の如く洋服を着せ替えられてから、偶にこうして街に出掛けてる。
リナリー曰く、女っ気のない私を着飾るのが楽しいんだとか。
…でも今の私、男だけど。
そんなの関係なく、着せ替え人形にさせられてしまうらしい。
「どう?着替えた?」
「うん。着替えたけど…」
「わ、思いの他似合ってる!」
「思いの他って何」
試着室のカーテンを開けば、途端に花が咲いたようなリナリーの笑顔が出迎えた。
言葉は多少引っ掛かるけど、美少女の満面の笑みを目の前にして悪い気はしない。
リナリーが選んでくれたのは、シンプルな白のトップス。
その上に深い藍色のテーラードジャケットを着て、下はカジュアルなデニム。
なんだろう、抜け感あるお洒落コーデって感じ。
リナリーってメンズ服まで選ぶセンスあったんだ…凄い。
「お洒落だね、これ」
「雪が似合ってるからよ」
「そう?リナリーに言われると嬉しいなぁ」
お洒落番長と言えばジェリーさんだけど、並ぶくらいお洒落度高いリナリーに褒められれば嬉しい。
にっこり笑って返せば、リナリーの目線はぱちりと瞬き下を向いた。
?
なんだろ?
「ああ、とてもお似合いですね」
そこへ低い声が割り込んできて、私とリナリーの視線を浚った。
よくある店員さんの接客の入り方だ。
顔を向ければ、お洒落なハットを被った笑顔の男性店員さんがいた。
「センスありますね、彼女さんが選んだんですか?流石、美男美女カップル」
うわあ…凄く突っ込んだ褒め言葉だな。
そしてこれは思いっきり営業褒めだな。
リナリーが美女なのは納得するけど、私への褒め言葉は早々納得できない。
男に変わっても、私の顔は変わらず並のままだ。