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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)



振り返れば、案の定。
其処には汗らしい汗一つ掻かず、足元に幾つものファインダーの仲間達の屍を転がすユウの姿があった。

わー…今日は一段とファインダー殺しの名が様になってる。
怖いなぁ。



「次だ、サッサと来い」

「ヒィッ!お、オレパス!」

「なんだよパスって!ずりぃぞ!」

「じゃあ俺もパス!」

「あ、あたた!持病が急に…!」



次は我が身と顔を青くした、まだ無傷な仲間達が一斉に後退る。

何、持病って。
そんなもの初めて聞いたけど。



「まぁ、仕方ないか」



あんなユウを前にしたら。
確かに怖いけど、いつもいつもいつもいつも任務先で一対一でその鬼と向き合ってきた私には、多少なりとも慣れがある。
後退る仲間とは逆に、前に踏み出した。



「じゃあ私とやろう。だからファインダーの皆を滅多打ちにするのはこれで終わりね」

「雪…!」

「おま…なんて男らしいんだ…!」

「オレうっかり惚れそう」

「前世は男だったろうなぁ…あいつ。絶対そうだ」



調子良いことを言う仲間にハイハイと適当に相槌を打って、ユウの前に立つ。
皆のお調子者な態度なんていつものこと。

そして、



「いいでしょ?女の時よりやり甲斐はあると思うけど」

「はっ、寝言は寝て言え」



ユウの喧嘩に乗り易い性格も、いつものこと。



「男なら容赦しねぇぞ」

「可笑しいな。女の時も容赦された憶えないんだけど」



片足を下げて体を斜めに。
静かに構えるユウに合わせて、私も握った拳を脇に添えた。

ユウ相手に持久戦は不利だ。
毎日鍛錬漬けで人並み以上の体力作りをしてる上に、体はあの第二使徒。
一般人の私から見ればユウの体力は無尽蔵。
ユウが疲れなんて見せる前に、こっちの息が必ず切れる。

スピートが勝負だ。



「…先手はくれてやる」

「やだよ、そんな怖い顔した仲間殺しの懐に突っ込むなんて。そっちが追ってきたら」

「言ったな。後悔すんなよ」

「男に二言はないから」



淡々とした言い合いが不意に途切れる。
一瞬の沈黙ができた、それが開始の合図だった。

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