第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)
「ったく。あーだこーだ外野が騒いでもあいつが楽しんでんなら意味ねぇだろ。それにどうせそのうち薬の効き目も切れ」
「時効はないよ」
「…あ?」
「私もそのうち切れるかと思ってたけど、どうやら雪の日頃の鍛錬や、女っけない環境や、精神的なものから、男性ホルモンはきちんと放出されてるらしくて。薬の効果が持続されてるらしいの」
ペラペラと小さなメモ帳を取り出し頷く南に、神田の動きも止まる。
「コムイ室長みたいな強力な薬じゃないけど、本人が戻りたいって意志がない限り効果は継続。我ながら凄い薬作れたよね。惚れ惚れす」
「しねぇよ」
「あだッ」
「うぉい!南に手ぇ上げんなさ!」
ごん、と神田の拳が南の頭に振り下ろされる。
憤慨するラビを余所に、舌打ち混じりに神田の目は離れた席の雪を映した。
「雪よォ、いい加減元に戻れよ」
「唯一ファインダーの中で癒しだった女の雪が…!」
「普段から私を女扱いしてなかったのに、今更何言ってんの。…あ、違った。俺を女扱いし」
「俺とか言うなぁあ!」
「やめろぉお!オレ達の雪がァアア!」
「だってこの声色で私とか言うと気持ち悪いでしょ。…あ、違った。気持ち悪いだろ」
「悪くないから!自分を見失わないで!」
「乱暴な言葉使っちゃダメぇ!」
滝のように涙しながら雪に縋るは、ランボーやターミネーターのような肉体を持つファインダーズ(♂)。
その醜態さではなく、彼らの中心で気にした様子なく爽やかに笑っている雪を見て神田は眉を潜めた。
雪のことを男女という垣根で見ていなかったからこそ、姿が変わろうとも想いが変わることはない。
しかしどうにも、腑に落ちないような気がして。