第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)
「お、重い…」
両腕いっぱいに抱えた洗濯物の籠。
山のように目の高さまで積もったシーツに辛うじて前を見据えながら、医療班であるエミリアはよろよろと一人廊下を進んでいた。
子鹿のような細い足はぷるぷると震え、小石でもあれば躓いてしまいそうだ。
「あ。」
目敏くそんな彼女を見つけたのは、エミリアと共に教団に入団した若きエクソシスト、ティモシー。
想い人の姿に、頼れるところを見せねばと駆け寄った。
「なぁっエミリ」
「持つよ」
しかし幼い両手が伸びるより早く、横からひょいとエミリアの籠を取り上げた腕が一つ。
「こんなに大荷物、一人で運ぶのは大変だろうし」
「えっ?あ、ありがとう…」
紳士的に女性に手を差し伸べる姿は、教団では見慣れた白髪のエクソシストの少年かと思いきや。
見知らぬ男の顔に、エミリアは戸惑いつつ礼の言葉を述べた。
ラビのようなふわりと柔らかそうなショート髪。
アレンより幾分か高い背丈。
顔立ちは若く東洋系にも思えるが見覚えはない。
白いブーツに黒のズボンとシャツは、ファインダーのマントを脱いだ者達の姿だ。
(ファインダーにこんな人いたかしら?)
教団は何百人もの働き手がいる職場だ。
いつの間にか新しい顔が増えていても可笑しくはないと、すぐにエミリアは思考を切り替えた。
「でもこれは私の仕事なのに…」
「ランドリールームはすぐ其処だし、なんてことないよ。小さな騎士もいるみたいだし」
「騎士?」
「小さいってなんだよ!バカにしてんのか!?」
男の目がティモシーを捉えれば、不服とばかりに肩を怒らせる。
それでもエミリアの前に立ち近寄らせまいとする姿は、確かに小さな騎士のようだ。