第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)
「してないしてない。じゃ、ティモシーはエミリア頼んだよ」
「って、なんでオレの名前…」
「私の名前も…ティモシーの知り合いじゃないの?」
「オレあんなあんちゃん知らねーよ。どっかで見たことある顔だけど…」
「そうなのよね。私もそんな気がして」
さくさくと軽い足取りで籠を運ぶ彼の後ろ姿に、二人して首を傾げる。
「そりゃそーさ」
「きゃっ?」
「ら、ラビのあんちゃん?」
そんな二人の間に、ぬぅっと顔を出したのは真っ赤な赤毛の青年。
いつも明るい太陽のような顔を、どことなく影らせたラビだった。
「あれ、二人もよく知ってるファインダーだから」
「え?そうなの?」
「オレ見覚えねーけど。誰なんだよ」
「雪」
「え?」
「は?」
「だから、雪」
「…え?」
「…は?」
「だから、月城雪だって。アレ」
「何言って…雪は女よ。あの人はどう見ても男でしょ。声だって背丈だって違うし」
「確かに顔は似てなくもねーけど、冗談にしちゃレベル低いぜあんちゃん」
「じゃあ本人に聞けばいいだろ。おーい雪!」
「───ん?」
口元に片手を当てて呼び掛けるラビに、ランドリールームの入口まで来ていた男が振り返った。
ひらひらと手を振るラビを見つけて、何かと首を傾げる。
「何、ラビ」
「さっき其処でユウが捜してたぜ。雪のこと」
「げ。」
「なんさ"げ"って。それフツー恋人に向ける態度じゃねぇだろ。雪」
「それが今朝、筋トレ最中に声掛けたら参加させられそうになったから、逃げて来たというか…」
「あの早朝地獄メニューか。あんなんつき合ってたら死ぬさ。なぁ雪」
「まぁね…ってさっきから私の名前呼び過ぎじゃない?何?ちゃんと聞こえてるけど」
「ん、」
「?」
ほれ見ろ、と言わんばかりの顔で振り返ったラビが、目の前の男を指差す。
きょとんと首を傾げる雪の目に映ったのは、口をぱくぱくと開閉させながらこちらを指差してくるティモシーとエミリア。
「「えぇえぇえええぇええ!?!!!!!」」
その数秒後、広い教団の廊下に二人の雄叫びは響き渡ったのだった。