第14章 Ⓡ◆路地裏イチャアンin神田【企画】
マリ専用に造られた科学班お手製のヘッドフォン型拡聴機。
それを以ってすれば、レーダーのように離れた場所にいる知人の存在も感知することができる。
静かに周りに耳を澄ませるマリに、ミランダも固唾を呑んで見守った。
ドンッ
「きゃあっ!?」
ピンと糸を張ったマリの集中力を切断したのは、そんな彼女の悲鳴から。
「あっごめんなさい!」
「ミャウッ」
「待てよレオ!」
バタバタと目の前を慌しく駆けていく、一匹の白猫と見知らぬ少年。
二人が声を掛ける暇もなく、走り様にぺこりと一礼。
どうやら猫を追いかけていた少年が、誤ってミランダと衝突してしまったらしい。
「大丈夫か?ミランダ」
「ええ、これくらい慣れてるから…───っ、」
「…手を擦り剥いたようだな」
「わ、わかるの?」
「わかるさ、ミランダのことなら。ほら、」
差し出される大きな手に、倒れた拍子に地面に手を付き赤剥けたらしい己の手を重ねる。
いつも以上に優しく包み込むように繋いだ手をそのままに、マリは張っていた肩の力を抜いた。
「近くの薬局にでも寄ろう」
「え?でも、誰か傍にいたんじゃ…」
「どうやら空耳だったみたいだ」
「そ、そうなの」
「それにAKUMAの音もない。此処に仲間がいても、手は貸さなくても良さそうだ」
「そうだといいけれど…」
「…それに、」
「まだあるの?」
「今はミランダとの時間を潰したくないから、な」
「!」
少し照れた様子で柔らかな笑みを浮かべるマリの言葉に、ぼふんとミランダの顔が真っ赤に染まる。
どこまでも初心で可愛げのある彼女の反応に笑みを深めながら、行こうと進む足。
赤い顔はそのままに、ぎこちなく後に続くミランダの背が人混みに紛れる。
「レオ!そっちは行き止まりだって!」
「ミャッ」
慌しく駆ける猫と少年の姿が、路地裏へと消えていく。
その場に残されたのは、ざわめく人の騒音のみ。