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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第14章 Ⓡ◆路地裏イチャアンin神田【企画】



「おい雪。もう行」

「二人が手繋いでるっあれって恋人繋ぎじゃないっ?」

「…だからなんだってんだよ…」



人が一人通れる程の狭い路地裏だ。
身を寄せ合って背中を壁に押し付けている神田の眼下には、雪の顔。
ほんの少しの距離を縮めれば触れられそうな距離なのに、目の前の彼女は一切此方を見ていない。
キラキラと目を輝かせて見つめているのは、大通りを進むマリとミランダだけだ。



(前にもこんなことなかったか)



過ぎるデジャヴ。
あの時はまだ雪への想いを自覚したばかりの、互いの関係もエクソシストとファインダーの延長線上のような、曖昧なものだった。
雪と初めて任務外で街に出向き食事をした。
その帰り道に同じに外出していたマリとミランダを見つけ、雪が出歯亀よろしく神田を路地裏に引き込んだのだ。



(こいつ、誰彼構わず引き込んでねぇよな)



吐息が掛かりそうな程の距離に神田は雪を意識せずにはいられなかったが、あの時も雪は今と変わらず二人の姿に夢中だった。
簡単に手を出せる距離で、簡単に無防備な姿で、身を寄せ合う。
今でこそ恋仲と言える関係になったから良いものの、そうでない時でもそんな姿を神田に見せていた雪だ。
どこぞの男にもこんなことをしていたらと思うと、自然と神田の眉間に力が入った。



「やっぱりあの二人は癒し系カップルだなぁ…どうしたらあんなふうになれるんだろ」

「………」



返答もせず、じっと眼光強い目で睨むように見ようとも、微塵も気にしていない。
いつもならひと睨みで、蛇に睨まれた蛙状態になると言うのに。
雪の心此処に在らずの様は、更に神田の眉間の影を濃くさせた。

近過ぎる距離に見える脳天の旋毛を睨む。
そこに拳の一つでも落としてやろうか。

どう雪の意識を此方へ向かせるか、物騒な思考で拳を握り考えていると、不意に襟首から垣間見える肌色に目が止まった。

幼い頃から組まされ、いい加減見慣れたなんてことはない雪のファインダーマント姿。
更には激しいAKUMAとの戦闘であちこち煤汚れた様は、女の気配など一つもない。
だからこそ、なのか。
その隙間から見える細い鎖骨に、惹き付けられたのは。

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