第4章 ◆入れ替わり事件簿(神田)
「なんですか?…話なら、お風呂上がりにでも…」
「いいからこっち向けっつってんだろクソモヤシ」
「ぼ、僕逆上せてるんで、そろそろ上がりたいんですが…」
仕方ないと、片手で自分の目元を隠しつつ振り返る。
このまま逃げたらまた殴られそうだし。
遠くに座る神田の気配をなんとなしに感じていると、ザブリと音が──…え。
「…か、神田?」
ザブザブと近付く音。
え、ちょっと待って。
なんでこっちに来るの。
アレンのこと嫌ってるんでしょ、犬猿の仲でしょ…!
なんで近付いてくるんですか怖い!
「神…っな、に…!」
思わず後退ろうとすれば、それより早くがしりと腕を掴まれた。
ち、近い近い!
「やっぱりな」
「へっ?」
そのままずいっと神田の顔が近付く。
「お前、モヤシじゃねぇだろ」
…。
……。
………。
………え、なんでバレた。
「な、何を意味のわから」
「モヤシって呼び名にまず反応しない時点であいつじゃない」
「!」
げ、そうだ。
そう言えばアレンはいっつも神田のモヤシ呼びに訂正入れてたっけ。
「ティムもテメェに付いてないし…何よりそのツラ見てもイラつかねぇ」
「…は?」
真っ黒な目がじっと私を睨むように見てくる。
確かにティムはアレンに付いてるけど。
…そういうところ、ちゃんと見てたんだ。
………というか、イラつくって。
アレンの顔見ただけでイラついてたの…どんだけですか。
「食堂の時から可笑しいと思ってた。そのツラ見てもイラつかねぇのに、何故か月城の顔見てると無性に苛立ってくる」
え、いや。
そんなこと言われても…って苛立たれてたの私?
入れ替わってても苛立つなんて…どんだけアレンセンサー働いてるの。
もう体に沁み込んだものだよねそれ。