第2章 ◇恋の始まり(ラビ)
「ん?」
感心と呆れ混じりに南を見ていたら、ふと机の隅に置かれてるそれに気付いた。
牡丹の花の形を象った和柄のそれは、つい数週間前にオレが南にやった物。
偶々任務先の出店で見つけた、和柄模様の入った髪飾り。
珍しさが目を惹いたのと、最近仲良くしてる南の国を思い出して、気付いたら購入していた。
「…持ち歩いてんの?」
普段仕事に埋もれてばっかで女らしさの見えない南だから、少しはその女子度の足しにでもなればいいと思って。
好意でやったもんだから、南も純粋に喜んで貰ってくれた。
でもこの髪飾りを付けている姿は、まだ一度も見たことがない。
南曰く、こんなの付けてたら科学班の男連中にからかわれるんだとか。
まー確かに、南がこんなもん付けてたら珍しいかもしんねぇけど…でも折角オレが女子度上げようとしてんのに。
その姿を笑うなんてどーゆうことさ。
なんか、もやっとする。
「…持ち歩いてんなら、付けりゃいいのに…」
そんな科学班連中にはもやっとするけど、こうして付けなくても持ち歩いてる南には、つい笑みが漏れた。
確かにリナリーに比べりゃ女子度低いけどさ。
ミランダと比べて性格もそんな女らしくねぇけど。
でもだからって魅力がないのとは違う。
ちゃんと着飾れば、きっと南だって女らしくなる。
オレの好み、年上美女ですから。
今まで色んなキレーなおねーさん見てきましたから。
それなりに目利きは持ってます。
「…ってことで。失礼シマス」
髪飾りを手に、机に突っ伏したままの南の髪に手を伸ばす。
仕事上がりだからか、いつも縛っている髪は下ろされている。
その少し乱れた髪を手櫛で整えて、サイドの髪をまとめるように耳より少し上の位置でぱちんと取り付けた。
「もーちょい…よし」
ちょいちょいと髪の毛を綺麗に手で整えて…ウン。
我ながらいい感じ。
「…つかこれでも起きねぇのかよ」
どんだけ熟睡してんさ。