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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第2章 ◇恋の始まり(ラビ)



「また徹夜してたんかな…」


 目元には僅かに隈の痕が見えて、思わず苦笑い。

 ほんと仕事中毒者ばっかだよな。
 科学班の連中って。


「一応女なんだから、場所考えろよ」


 苦笑混じりに呟きながら、隣の個人机の椅子に腰掛ける。
 持ってきていた本を開きながら漏れた言葉は、大して気にかけた言葉じゃないから軽い。

 最近よく話すようになったこの南って人間は、オレには隣にいて居心地の良い存在だけど…別に異性としては見ていない。
 偶々居心地の良さを感じた相手が、女だっただけ。

 ……どうせならリナリーくらい美人だったらよかったのに。
 そしたら目の保養にもなったんだけどなー…。


「…"これ"だもんなぁ…」


 視線を本から南に変えて、改めて見る。

 クタクタの職場の白衣姿のままで、疲労感の残る顔。
 少し開いた口から多少涎なんて垂れてる始末。
 どこをどう見ても女の欠片も見えなくて、思わず脱力気味に笑ってしまった。


「借り物汚したら怒られるさー」


 後で起きて涎の垂れた文献に顔を青くするのは、目に見えてたから。
 ずりずりと椅子ごと近付いて、仕方ないと服の裾で口元を拭ってやった。

 オレって面倒見いい奴。


「って起きねぇし」


 起きても構わないから、普通に拭いてやったんだけど。


「んむ…」


 むにゃむにゃと寝言ともつかない声を発するだけで、目の前の南は起きる気配なし。

 どんだけ疲労溜まってんさ…ってか寝付き良過ぎだろ。こんな固い机の上で。

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