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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第13章 ※◇◆Summer to spend with you.



「ふふっ」



ちりん、ちりんと。
鈴の音が鳴るような微かな、それでいて確かな響き。
ぱたりと声を止めて向けた二人の目に、映ったものは。



「よかった…」



眉を僅かばかり下げて、それでもはにかむ南の姿だった。



「飽きられたら、どうしようかと、思ってたから…」

「何言ってんさ。それくらいで飽きるくらいの想いなら、こんな所にいねーっての」

「そうだな。その方が楽かもしれないが、俺は願い下げだ」

「同感」



楽ではない、きつい道を選んでいるのは南の方だ。
それに見合う男になりたいと思うのは、きっと当たり前のこと。

当然のように述べる彼らにまた、ぱちりと目を瞬いて。
やがて南は、優しく口角を緩めた。



「まだきちんと答えを出せていないけど…私、二人のこと大好きですよ」



それは都合の良い言葉ではなくて、本心からのもので。



「不謹慎かもしれないけど、なんだか両手に花みたい。嬉しくなっちゃいますね」



眩い夜空の大華に照らされて、肩を竦めて仄かに笑う。

花火の轟音など響かない。
響くは、彼女が紡ぐ言葉だけ。
思わず熱くなりそうな顔を伏せつつ、ぽり、とラビは頬を指先で搔いた。



「…それ、使い方違くね?オレら男だし」

「そう?私にとって二人は花だよ。人として、とっても魅力的なもの持ってるもん」

「そう、か?」

「そうですよ。だから私は贅沢者だなぁって」



年齢や立場などではない。
二人には、二人にしかないものをそれぞれ持っている。
それはどうしようもなく、南を惹き付けて止まないのだ。

贅沢者だと言っては嬉しそうに笑う南に、些か照れた顔で見合うリーバーとラビ。



「…じゃ、贅沢する?」



先に視線を戻したのは、どこか吹っ切れた表情のラビだった。

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