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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第13章 ※◇◆Summer to spend with you.



目線は足元に落としたまま。
縮こまるように膝を抱いて、蚊の鳴くような声で思いを告げる。
それも最後まで形になることはなく途切れる、そんな南の様にラビは視線をちらりと上げた。
見えたのは、南の向こう側にいる同じ想いを抱えた相手。
意外にも視線は合い、交わったのは一瞬だけだったがそれで充分だった。



「はーあ」



大きな溜息をつけば、びくりと南の肩が跳ねる。

ラビが一方的に想いをぶつけて逃げ出そうとした時、体を張ってまで止めたのは南だった。
半端に消そうとした想いを、ここまで形にできたのは他成らぬ彼女だったからこそ。



「今更何言ってんさ、ンなの当たり前だろ」

「ぅ、うん…?ごめん」

「謝んなって。何も悪いことなんてしてねーのに」

「うぷ」



ぷに、と南の頬を押すラビの顔は、先程の顰めっ面などしていない。



「南の性格なんて充分知ってんさ。だから好きになったってのに」

「そうだなぁ。お前に似合わず真面目だよな、南は」

「うぉいはんちょ」

「本当のこと言ってるだけだろ」



ぷにぷにと南の頬を突くラビの手を止めたのは、にっこりと笑顔を浮かべるリーバー。
その目がラビから南へと移ると、途端に優しい色を帯びる。



「お前は優し過ぎるからな。色んな思いで雁字搦めになってることくらい、わかる」



相手を心底思いやる心を持っているからこそ、あの惨劇は南の心を引き裂いた。
だからリーバーも待つと言ったのだ。
弱っている彼女の心につけ込むような真似は、したくないと思ったから。



「それくらい待てないようじゃ、男として失格だろ」

「あ、それオレが言おうとした台詞!」

「言ったもん勝ちだな」



はん、と笑うリーバーに悔しげに唸るラビは、どこからどう見ても南の思い描いていた反応と違う。
ぱちりぱちりと目を瞬いて、じゃれ合っているようにも見える二人を再度見つめた。



「先に見つけたのはオレなんですけどっ?」

「見つけたのは、だろ。手に入れたもん勝ちだってあの時も言ったけどな?」

「…ふ、」



言い合う二人の声の合間に、届いたのは微かな笑い声。

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