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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第13章 ※◇◆Summer to spend with you.



「…リーバー班長?」



花火を見上げて沈黙を作るリーバーを、南が呼ぶ。
軽く息をついて、視線を戻したリーバーは申し訳なくも笑った。



「少し、大人げなかったなと思っただけだ」

「………」



何が、と南は問わなかった。
沈黙を作ると、やがて膝を抱いたまま花火から視線を下げる。

傍から見えるエミリアやミランダ、何処かでこうして同じ花火を見ているであろう、雪や椛。
彼女達には当たり前にできていることが、自分にはできていない。
その自覚は薄々とあった。

リーバーに片想いをしていた頃に、ラビに想いを告げられ。
彼の気持ちと向き合っていこうとしていた頃に、リーバーの想いを知った。

すぐには出せない答えに、二人は待つと言ってくれた。
ラビへの燻る思いがなんなのか、名前の無い感情の正体を見つけるまで。
リーバーと共に失くした、亡き仲間への思いの整理がつくまで。

そうして中途半端に立ち尽くしている南にとって、雪達は眩しい光のようだった。
迷いなく相手を想う気持ちを、ただその人だけに向けることができているのだから。

自分には、簡単にできないこと。



「…ごめんなさい」



ぽつりと零れ落ちた南の声は、か細く。
花火の音に紛れながらも、リーバーとラビの耳はその声を拾った。



「私が二人に甘えてるから…色々、迷惑掛けてる」



共に花火を見上げていた薄いグレーの瞳と、鮮やかな翡翠色の瞳が向く。



「ちゃんと出します。私の中で、ちゃんと…整理、するから」



二人の視線は感じるものの、なんだか真正面から見ることはできなくて。
砂の付いた自身の裸足を見下ろしたまま、南は膝を抱く腕に力を込めた。



「だから…それまで、もう少し。このままで…」



いたい。



(っていうのは、我儘なんだろうな…)



きゅっと唇を噛み締める。
自意識過剰などとは思わない。
それだけ二人にはっきりと伝えられた想いは、自覚しているつもりだ。

それでも。

手を伸ばせば触れられる場所に、今はリーバーもラビもいる。
曖昧で中途半端でも、その距離が今の南には必要なものだった。
心に渦巻く思いを整理する為には、もう少しだけ時間が欲しい。

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