第13章 ※◇◆Summer to spend with you.
「よく見たら教団ってカップル多いよね。神田と雪に、アレンと椛もそうだし」
「ティモシーとエミリアはカップルって言うのか?」
「時間の問題じゃないですか?私は将来二人がくっ付くに一票」
げんなりと辺りを見るラビとは反対に、南は微笑ましいものを見るような笑顔。
10歳前後のティモシーと成人間近のエミリアでは歳の差があるだろうと投げかけるリーバー相手でも、その笑顔は消えやしない。
「せめてあのイチャつきっぷりが見えない所に行こーさ…見てて哀しくなる」
誰が見ても微笑ましい、互いに互いを思い合っているような姿。
彼らに非はないが、悲しきかな、自分の立場を思えばどうしても羨んでしまう。
「でも何処に行っても人でいっぱいだよ」
困ったように辺りを見渡す南の言う通り、海を上がった団員達で埋め尽くされたビーチは満員。
まだ今いる場所の方が、人気が少ない。
「はーぁ。戦闘機関だってのに、平和さなぁココ」
「良いことじゃない?皆、羽が伸ばせたってことで。あ、だから班長ももう仕事しちゃ駄目ですよ。今日はお休みですっ」
「はは、わかったよ。…まぁ、ラビの気持ちはわからないでもないがな」
「え?」
「そうなん?」
意外なリーバーの言葉に、きょとんと二人の目が向く。
テントの中で処理していた決算書は、決して急ぎのものではない。
それでも仕事に没頭したのは、邪な気持ちを隅に追いやる為だ。
青の洞窟で、気付けば姿を消していた南とラビ。
ラビがいれば大丈夫でしょうと笑うジョニーに、上手く笑い返せたかもよくわからなかった。
慎重派なリーバーとは違い、なんにでも興味を持ち南の手を引いては連れ出していくラビ。
その為か、ラビの傍で南が飾り気のない素の笑顔を浮かべているところは、度々見てきた。
彼だからできることなのだ。
自分では、こうして気遣わせるばかりで屈託なく笑わせることは難しい。
そんなラビに、いつか南の手を引いてそのまま連れ去られてしまうのではないか。
そんな不安も、少なからずあった。
(…俺もまだまだ子供だな…)
いい歳をして情けないとも思うが、仕事のように簡単に切り替えられないのだから仕方ない。
心は、別物だ。