• テキストサイズ

廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第13章 ※◇◆Summer to spend with you.



どぉん、どぉんと音が鳴る。
祭りの音頭のような、体に直接訴える響き。
それは目の前の光の華と連動して、見ているだけで胸を弾ませる。



「ふわ…こんなに近いと圧巻ですねー…ねっ班長」

「ああ…そうだな」

「ラビも」

「…そーさな」



笑顔で交互に左右を見やる。
南を真ん中に、両隣に座るリーバーとラビもまた習って夜空を見上げる。

確かに花火は綺麗だ。
その圧巻さも認めよう。

しかし。



「すっげー!オレこんなでっかい花火見たことねーや!」

「孤児院じゃ打ち上げ花火なんてできなかったものね」

「うん……チビ達にも見せてやりたかったなぁ…」

「…ティモシー…」



爛々と瞳を輝かせていたティモシーの顔が、不意に陰る。
故郷であるハースト孤児院と、其処で共に暮らしていた家族同然の子供達を思い出したのだろう。
そんなまだ幼き少年に寄り添うのは、同じ孤児院でシスターをしていたエミリアだった。



「じゃあ見せてあげればいいじゃない」

「え?」

「聖戦が終わったら、一番に皆の処に帰るんでしょ?その時に、花火を手土産にしてあげたらいいのよ」



"いつかこの聖戦が終わったら"

そんな夢のような話を、なんでもないことのようにするエミリアの笑顔は、孤児院にいた頃から変わらないものだった。
夢のような話かもしれないが、決して夢ではないのだ。
戦いに身を投じるこの生活にも、きっといつかは終わりがくる。

そう、信じてさえいれば。



「私も一緒に選ぶから」



決して一人ではないのだから。



「…そう、だな。うん。でっけーロケット花火とか、持って帰ってやんねーとな!」



小さなティモシーの手に手を添えるエミリアに、やがては少年の顔にも笑顔が戻る。
その笑顔はどことなく、照れ臭さも入り混じったもの。
同じハースト孤児院出身であるが為だけではない。
そこには、二人の中にある特別な繋がりのようなものが感じられた。

/ 723ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp