第13章 ※◇◆Summer to spend with you.
「わぁ、凄い機械。コムイ室長、本格的な打ち上げ機械作ったなぁ」
「つーかさ、あれ作る暇があったら発電機直せたんじゃね…?」
「それは言わないお約束」
青の洞窟を後にすれば、ビーチでは各々が寛ぐ中、"96"と書かれた巨大な機械から花火が打ち上げられていた。
「なんかずっと洞窟にいたから、腹減ったさ。飯でも食いながら花火見ようぜ」
「うん」
「あー!南!」
ラビに言われるまま、相変わらずバイキング形式で豪勢な料理が回っているジェリーの下へ向かえば、一足先に洞窟から戻っていたジョニーが声を掛けてきた。
「途中で見なくなったから、心配してたよ。何処行ってたの?」
「そうなの?ごめんねジョニー」
「洞窟の横穴に空間があって、其処で遊んでただけさ。なぁ南」
「ぅ、ん」
なっといつもの人懐っこい笑顔で催促するラビに、南はほんの少しだけぎこちなく頷いた。
しかしビール片手に酔っているジョニーは気付かなかったのだろう、そっかぁと笑顔を向けるだけ。
確かにラビの言う通り、先程まで見つけた横穴の先の空間で二人で時間を過ごした。
しかしラビの言う通り、単に遊んでいたかと問われれば頷き兼ねる。
(ああいうのは友人同士ですることじゃないし…)
ラビの誕生日祝いにと、付けられた体の印が消えるまでは彼のものでいると応えた。
最初こそ驚いていたラビだったが、流石柔軟ある性格と言おうか。
宣言通り、鮮やかな紺碧色の水面の空間では本物の恋仲のように扱われた。
茶化すような動作ではなく、慈しみを持って触れてくる手。
人懐っこい瞳ではなく、愛おしさの混じる色で見つめてくる瞳。
いつもは賑やかな口が、その時ばかりは物静かで。
ラビに愛される人はこんな気持ちになるものなのかと、ただ同じ空間を共有していただけなのに、何度も赤面してしまったものだ。
元々強く付けられていなかった跡は、日暮れと共に南の肌から消え去った。
それを機にビーチへと戻ってきたのだが、先程までの愛瀬のようなものを思い出せばほんのりと顔は熱を持つ。
「リーバー班長も心配してたよ」
しかし何気ないジョニーの口から出た名に、顔の熱も止まってしまった。