第13章 ※◇◆Summer to spend with you.
「アレンの話も…よくしてくれてるぞ…」
「え?」
「わぁあっ!そ、そうだったかなっ?」
「え、どんな話ですか。凄く気になる」
「アレンくんっヘブラスカ!」
途端に顔を真っ赤にさせて慌てふためく椛を見るところ、余程プライベートな話なのか。
興味津々なアレンに、ヘブラスカは艶やかな唇を緩ませ微笑んだ。
「ふふ…内容までは、な…女同士の秘密だ…」
「ええっそこまで言ったなら教えてくれたって…!」
「も、もういいよ部屋に戻ろうアレンくんっ私、足痛いっ」
「そんなにピンピンしてるのに!?」
「花火のこと思い出すと悲しくなったの!部屋でふて寝するの!」
「まだ寝るには早いですよっ」
「そういう問題じゃなくって…!」
やんやと言い合う二人の姿に、ヘブラスカはまたもや微笑ましいものを見るように笑った。
椛の頬に触れた髪束で、彼女の感情は伝わってくる。
夏の夜をビーチで過ごせなかったことは、純粋に悲しかったのだろう。
「椛…なら今夜は…私につき合ってくれるか…?」
「私は──……え?」
「ヘブラスカ?何を…っ」
「わぁ!」
「貝殻の礼だ…」
するすると椛の胴体と四肢に絡み付いたヘブラスカの髪束が、いとも簡単にその体を持ち上げた。
慌てたアレンが手を伸ばそうとするが、それよりも先に動いたのは髪束。
「お前も一緒だ、アレン…でないと椛が哀しむ」
「う、わ…っ」
するりするりとアレンの体を持ち上げ、波のように犇き合う髪束はまるで白く発光する柔らかいシーツのようだ。
下半身を埋めたままアレンは椛の傍に寄ると、しっかりと手を繋いだ。
「ヘブラスカ、一体何を…」
「今夜、此処には私達だけだ…咎める者はいないだろう」
するすると持ち上がる白い波は、ヘブラスカの頭上を越えてどんどんと上へ登っていく。
ヘブラスカの広間は地下にあるが、その遥か高みにある天井扉の先は、外部へと続いている。
緊急時にしか開かない扉は、普段は固く閉ざされ監視されている。
しかし今、その監視の目はない。