第4章 ◆入れ替わり事件簿(神田)
「…ご馳走様」
「あれ? どこ行くんさ?」
残りの目の前の料理を全部お腹に収めて、席を立つ。
「なんだかお腹いっぱいになったら眠たくなって。休みます」
問いかけてくるラビにそう軽く笑って応える。
眠気はなかったんだけど、この場でこんな神田を見ているのはあまり良い気分じゃなくて、早々立ち去ることにした。
「…はぁ」
溜息混じりに同じように席を立ったのは──…リンクさん?
「部屋に戻るんでしょう。行きますよ、ウォーカー」
「ぁ…うん、」
アレンのフリをしてる私に、合わせてくれてるんだ。
さくさくと先を進むリンクさんに、つい笑みが漏れる。
なんだかんだ、リンクさんって優しいよね。こういうところ。
「じゃ…雪さんは任せました」
「ハイハイ」
グッと親指おっ立ててラビに言えば、ヒラヒラと呆れ混じりに片手を振られた。
アレンを神田と二人だけにするのは可哀想だし。
なんだかんだ面倒見いいよね、ラビも。ありがとうございます。
「…おい」
「……はい?」
予想外の声に呼び止められて、思わず目を瞬く。
見れば、訝し気に見てくる神田と目が合った。
何。
「……」
「…なんですか」
じーっと私を見てくる目は据わってて怖い。
そんな睨まないでくれませんか怖い。
「…いや」
それも束の間。
ふいと逸らされる目に、内心安心しつつも早々と背を向けた。
またあのすんごく痛い鉄拳を喰らったら堪らないから、その前に逃げるとしよう。
うん。
「──ありがとう、リンクさん」
「今回だけです」
食堂を出て、廊下をリンクさんと共に歩く。
自室は勿論自分の部屋を使うから、向かう先は私の部屋。
「姿はウォーカーのものでも、婦女と同じ部屋で寝ることはできませんから。私はウォーカーに付きます」
「あ、うん」
姿が私なのはいいんだね。
…きっと女として見られてないんだろうな。
………うん、若干複雑。
中身は入れ替わっても、リンクさんの監視対象はやっぱりアレンなことに変わりなかったらしい。
ブレないその姿は、流石中央庁の人だなぁと感心した。