• テキストサイズ

廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第13章 ※◇◆Summer to spend with you.



「だから、ズボンに、何か入ってるんだってば…ッ」

「…何かってなんだ」

「わ、わかんない、けど、多分…」



一歩も身動きできない状態なのか、救いを求めるように彷徨う手はぎこちなく、其処から前へ進みはしない。
それでも必死に訴えかけるように、雪は食い入るように神田を見た。



「へ…蛇…かも」



それは予想だにしなかった答え。



「……何寝惚けたこと言ってやがる」

「ほ、本当だってば…ッこんな悪趣味な嘘つかないから…ッ」



思わず真顔で突っ込めば、雪は更に泣きそうな顔を歪めた。
ここまで情けない声で泣き言を言う姿は、確かに普段の雪からはそう簡単に想像できない。
となると本音なのだろう。



「どうせ蛙かなんかだろ」

「蛙は、こんなに、長く、ない…」

「物体の形なんてわかんのかよ。そんな阿呆面で明後日の方角なんざ見ておいて」

「だ、だ、だって、ずぼ…っ水着、なか…!」

「あーもうわかった。いっぺん口閉じろ」



雪の傍まで寄れば、痛いくらいに腕を掴まれた。
余程恐怖を感じているのか、縋るような目で見られ流石に冗談ではないと悟る。



「動くなよ。確認する」

「確認って…」

「怒るなよ。調べるだけだ」

「?───っ!?」



確認を取る暇もなく、神田は唐突に雪の短パンの中に手を捻じ込んだ。



「手荒にしたら、か、噛むんじゃ…!」

「だったらじっとしてろ」

「っっ」

「声も上げるなよ」



短パンの中を弄れば、狭い隙間だ、何かがいればすぐに見つかるだろう。
神田の腕を引っ掴んだまま、雪は固く目を閉じ唇を縛った。
やがて神田の手が触れたのは、細長い"何か"。

本当に雪の言う蛇なのだろうか。
となればすぐに撤去する必要がある。
尻尾の先なのかもしれない、その"何か"を神田は強く短パンの中から引き摺り出した。



「あ…ッ」



雪の体に触れないように掴んだまま高く腕を上げれば、感覚で悟ったのか、弾けるように雪の顔も上がる。
ぷらん、と神田の手に握られたそれが視界で揺れる。



「…あ?」



空の色に同調する、アクアブルーの鮮やかな紐パンツが。



「間違えた」

「ッッ!(どんな間違え!)」

/ 723ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp