第13章 ※◇◆Summer to spend with you.
「ね。気持ちいいでしょ?」
「…まぁまぁだな」
「またまた。服だって脱いだ方が開放感あるでしょ」
「ならお前も脱いだらどうだ」
「え?」
「そのズボン」
「や、別に今更脱ぐ気は…これ水着にもなるし」
「なくても此処なら困らねぇだろ。脱げよ」
「いや…別に、脱いでも脱がなくても一緒っていうか…」
「じゃあ脱いでいいだろ」
「そこまで強制されるとなんか脱ぎたくないっていうか」
「あ?」
「脅しに来ないでよ。何、身包み剥がしてカツアゲでもする気」
「するか。つーか逃げんな」
「逃げるでしょなんか」
迷わず歩み寄ってくる神田に、つい雪の足は距離を取ろうと後退る。
静かな湖畔で男女二人が奇妙な攻防。
そこに終止符を打ったのは、雪だった。
「遊びたいっつったのはお前だろっ」
「これ遊び!?カツアゲの練習じゃ───っ!?」
ざぶざぶと波を立てて逃げていた雪の体が、唐突に固まる。
ぎしりとぎこちなく強張る雪の挙動に、何かと神田も足を止めた。
「っ…!」
「なんだ、変な顔して」
固まったかと思えば、勢いよく神田へと向けられた顔は驚愕のもの。
何かに驚いているらしい。
「ゅ…ゆ、う」
「あ?」
「ゆゅゆゆ、ゆ…っ」
「…頭大丈夫か、お前」
「あっ…!な、こ…!ひぅ…!」
「マジで大丈夫か」
顔は蒼白い。
わなわなと震えた口からは意味もわからぬ、単語とも取れぬ声が零れるだけ。
変なものでも踏み付けたのか。
はたまた脚でも突っ立のだろうか。
ざぷりと一歩踏み出せば、即座に雪の手が静止しろと言わんばかりに翳された。
「お、落ち着いて…!」
「お前が落ち着け阿呆。変なもんでも踏んだか」
ふるふると青い顔のまま首を横に振られる。
「じゃあなんだ。水着が破けたりでもしたか」
更に首を横に一振り。
「一体なんだってんだよ。はっきり言え」
意味のわからぬ騒動に、神田の声に苛立ちが混じり始めた頃。
「ず、ずぼん…」
わなわなと口を震わせたまま、雪は泣きそうな顔で悲鳴を上げた。
「ズボンに、何か入ってる…ッ」
「………は?」