第13章 ※◇◆Summer to spend with you.
「もう、あんまりジロジロ見られたら隠したくもなるでしょ」
胸の前で手を交差させながら、神田から身を離す。
視界が開けたそこで初めて、雪はさぁさぁと降る雨のような音の意味を知った。
「わ、何此処っこの島こんな所あったんだっ?」
「水の匂いがするって言ったろ」
密林のど真ん中。
青々と茂った新緑の中で突如目の前に現れたのは、高い岩場と透き通った湖。
まるでジャングルのオアシスのようだ。
「てことは…あ。真水!これ海水じゃない」
さぁさぁと岩場から流れ落ちてくる水に手を翳し口に含めば、冷たく喉を潤してくれる。
「まさか天然水の湖があるなんて」
「ぶっ倒れる前に水分補給しとけよ」
「うん。…そうだ、ユウっ」
「?」
「どうせだから、此処でひと泳ぎしていかない?」
ちゃぷりと湖に足を差し込み雪が笑う。
「秘密のビーチみたい。きっと誰も来ないよ」
「…この格好のまま入れってのか」
ちゃぷちゃぷと湖の深い場所へと進む彼女を追うこともなく、神田は自身の服装を告げた。
入ろうと思えば入れなくもないだろうが、この場での一張羅はこれだけだ。
特にジーンズは濡れてしまえば、水着のような速乾性はない。
眉間に僅かばかり皺を寄せ問う神田に、きょとんと振り返った雪はまじまじと改めてその姿を見つめた。
「じゃあ脱いじゃえば?」
さらりとなんでもないことのように告げる。
「出すもの出しても堂々としてろって言ったのはユウだし。それならユウも堂々としてられるでしょ。服脱いで入っておいでよ」
「………」
「ほら、気持ちいいよー」
笑顔でぱしゃりと水を仰ぐ。
そうして誘ってくる雪には、どんな仏頂面を向けても意味はなさないだろう。
やがて溜息と共に神田は一歩踏み出した。
湖へと向かいながらシャツとズボンを脱ぎ捨てる。
ざぷりと程好く冷えた湖に足を突っ込めば、まじまじとこちらを見てくる両目と重なった。
「なんだ」
「…本当に入ってくるとは」
「言ったのはお前だろ。阿呆か」
呆れた口調も阿呆という暴言も気にならない。
素直に従ってくれた神田の行為に、自然と雪の顔も笑顔に満ちた。