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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第13章 ※◇◆Summer to spend with you.



「どうせユウはわかってくれな」

「わかんねぇ」

「早いな!もう少し乙女の傷心の余韻に浸らせる気はないの!」

「そんだけ喚けりゃ充分元気だろ」

「ぅぅ…相手が私だと思って…他の女の子なら絶対別れてるよ…」

「俺はお前以外とつき合う気はない」

「っ…ほ、絆されないからねそれくらいでっ」

「絆されろよどうせなら」

「嫌っ私の気持ちガン無視のユウなんて…ってちょっと、何処行くの…っ」

「水の匂いがする」

「ガチでガン無視!」



雪の声に皆まで耳を貸さず、ずんずんと進む神田の足は生い茂ったジャングル内を更に奥深く進む。
その手はしっかりと雪の手首を掴んでいるものだから、ついて行かざる終えない。



「っ…ちょっと、待って」

「足元ふらついてんぞ」

「ユウが引っ張るからでしょ…っ暑い、し」

「こんな熱帯地でそれだけ叫べばな。そのうちぶっ倒れるぞ」

「じゃあもうちょっと優しくしてよ…」

「だから此処にいるんだろ」

「?」



意味がわからないと表情で訴えてくる雪に、神田は前を見据えたまま振り返らない。



「俺はお前の傷跡なんて気にしない。お前の体は綺麗だろ」

「っ…そんなふうに思うのはユウだけだよ…」

「それで結構。俺と同じ目でお前を見る野郎が出たら困る」

「…じゃあ私の体が汚いって思われてもいいってこと?」

「そいつは斬る」

「…どっちなのそれ…色々矛盾してるよ」

「そんなもんだろ」



進みながら、ちらりと横流しに投げ掛けられる切れ目の視線。



「どっちも俺の本心だし、矛盾してたって事実だ。だからお前もそんなちぐはぐな思いで悩んでんだろ」

「………」

「傷跡なんて気にしねぇ癖に、俺の前では綺麗でいたいなんて矛盾してんだろ」

「…それは…」

「でもどっちもお前の心なんだろ」

「…うん…」

「だから俺は此処にいるんだよ」

「どういう意味?」



今度はしかと言葉にして問い掛けてくる雪に、ようやく神田は足を止めた。



「周りの目を気にして縮こまるくらいなら、周りの目全部排除してやるから堂々としてろ。不安だってんなら、自信がつくまで何度だって言ってやる。だから下手に隠すな。そっちの方が余計目につく」

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