第13章 ※◇◆Summer to spend with you.
「……チッ」
「わっ」
諦めたのか、舌打ちと共に担いでいた雪を下ろす。
急にがくんと下がった視線に戸惑いつつも、雪は騒ぐことなく辺りを見渡した。
「え。何」
「…此処でいいだろ」
「え?何が?」
「ビーチは無理だ、諦めろ」
「ええっ!」
仏頂面でそっぽを向く神田は、どうやら海を断念したらしい。
「なんでっ?いいじゃない皆がいたって!カッキー達はそんなに人数多くなかったし、離れていれば絡んで来ないかも…っ」
「あいつらがそんなタマかよ。大体髷女なら、お前を見つけたら絶対に絡みに来る」
「じゃあ教団の皆の所は?私が近付かないように周り見張ってるからっ」
「モヤシにネタにされんだろ」
「いいじゃんそれくらい!楽しかったねって返してあげれば。アレンも拍子抜けしてそうですねって笑うかも!」
「んな訳あるか。百歩譲って冷笑だろ」
「それは…っ」
恐らく神田の言うことは当たっているだろう。
だとしても何故そこまで他人と絡むのを嫌うのか。
鍛錬ではあれ程、周りが嫌がっても寧ろ自ら絡んでいると言うのに。
「っ…もう、ユウの意地っ張り!少しくらい譲ってくれたっていいじゃない…ッ」
結局なんだかんだ神田の根本は変わっていないのか。
堪らず泣きそうになる顔を歪めて、雪は目の前の胸を叩いた。
「譲れるか。そんな格好してる癖に」
しかし逆に手首を掴まれて動きを阻止される。
かと思えば神田の口から出た予想外の言葉に、眉尻を下げていた雪の目はぱちりと瞬いた。
「…そんな格好?」
言われて見下ろす自身の体。
アクアブルーのビキニに、白い短パン。
此処は南国の島だ、決して可笑しな格好ではないだろう。
「お前、あいつに服貸しただろうが」
「あいつって……椛?それは…色々、ハプニングがあって仕方なく…」
まさか水着がウォータースライダー中に弾け飛んだなど言えやしない。
言葉を濁しつつ、雪はしげしげと神田を興味深そうに見上げた。
「まさか…それで人と絡むの嫌がってたの…?」
「………」
無言は肯定の意。
胸の前で拳を握ったまま、雪はガクリと肩を下げた。
つまりは、雪の肌の露出が増えたが故。