第13章 ※◇◆Summer to spend with you.
「…ボッタクりで儲けるのが夢かよ…。いい年こいてもっといい夢見たらどうなんだよ、うん?無駄に長生きしたらダメだろ」
「濡れ手に粟、棚からぼた餅、瓢箪から駒、果報は寝て待て、夢とロマンがいっぱいじゃないか」
「墓場に金は持っていけませんよ」
「迷信だ。この二十一世紀に何を言っている。ドラえもんに粛清されるぞ、鬼鮫」
「…流石にあんなモンにやられる私じゃありませんよ…」
「そうですよ。干柿さんは青い狸になんかやられません。大体ハイシーズンのUSJで毎日やられ疲れてる干柿さんにそんな事言うのは酷ですよ。そっとしといてあげて下さいな」
「……牡蠣殻さん…何の話です」
「あっ」
わいのわいのと騒ぐ彼らの中に見知った髷を見つけて、雪が神田の肩の上でがばりと体を起こす。
「牡蠣殻さんだ!おーいカッキむぐっ」
ぶんぶんと手を振り呼び掛ける雪の口を、即座に塞いだのは神田の手。
「んん!?」
「黙ってろ、面倒なことになんだろーがッ」
「成る程、JAWSか。ぶっちゃけ一日幾ら稼いでるんだ?残念だ。俺もヒジキを必要とするアトラクションがあればこんなところでイカなど焼いていないのだが…」
「そうかぁ。鬼鮫はUSJで荒稼ぎしてんのかぁ。そりゃイカ焼きでボッタクられても痛くも痒くもねぇよな、うん」
「マジで仕留められりゃいいのよ、こんな嫌味くさい鮫は。仕留められてウォーターワールドで吊られてりゃいいのに、何でわざわざ生かして返してよこすのかしらね、USJ。…気が利かないったらないわ…」
鬼鮫のUSJネタで盛り上がる彼らは、雪と神田には気付いていない様子。
好都合とばかりに、神田は踵を返すと再び密林の中へと足早に向かった。
「むぐぐぐ…!」
「うっせぇ、却下だ。なんでわざわざ暑い中、暑っ苦しい奴らの相手しなけりゃなんねーんだよ。明らかに面倒臭ぇ面子だろ」
恨めしそうに見てくる雪の心は簡単に読み取れた。
しかしそれは今の神田には迷惑なものでしかない。
誰もいないビーチを目指したのは、何も絡まれるのが嫌だっただけではないのだ。