第13章 ※◇◆Summer to spend with you.
「知らない訳ないでしょ。二人揃って仲良くDV同盟組んでる癖に」
「何が同盟だ。お前とあの髷女が勝手にそう呼んでるだけだろ」
「あ。認めるんだね、牡蠣殻さんのこと。やっぱり知ってるじゃない」
「………」
鬼鮫と呼ばれる、忍の者。
その魚人のような人間離れした男と、神田は面識があった。
互いに他人に興味を持たない人種だが、だからこそ馬が合ったとでも言おうか。
雪の知らぬ間に知り合い、何処ぞの色男が営業するバーで酒を交えて帰ってきたこともある。
そしてそんな二人に共通しているのは、腕っ節や他人への希薄さだけではない。
傍に置いている、恋仲と称しても過言ではない女性への横暴さ。
鬼鮫の彼女へとDVっぷりは、それはもう雪も心底同情してしまう程のものである。
その女性こそが、神田が"髷女"と呼んだ牡蠣殻磯辺という名の者。
日頃神田から拳を受けることの多い雪が親身に同調し、これまた神田と鬼鮫のように知らぬ間に酒も交え仲良くなった相手である。
鬼鮫だけならまだしも、牡蠣殻まで見つけてしまえば雪が見過ごすはずはない。
それを重々承知していたからこそ、神田は嫌な予感に顔を顰めた。
どうやら海水浴をしているのは、鬼鮫が所属している暁という組織らしい。
其処にあのぱっつんぱっつんに結った髷に大きな眼鏡を掛けた女性はいないだろうか、と。
「厭ですよ。何であなたにおごらなきゃないんです。馬鹿らしい」
「狭ぇじゃねえかよ、オメーの心もよ!うん!?」
「おいおい喧嘩すんな。イカ焼きくれぇ俺が買ってやっからよ」
「千両になります。毎度あり」
「千両!?おいコラちょっと待て。この数分で随分物価が上がっちゃってっぞ?おかしかねぇか、角都」
「だからよ、こいつ計算できねぇんだって。うん」
「駆け引きだと言っただろう。頭の悪いテロリストめ」
「流石に二倍高は駆け引きになりませんよ、角都。当たって砕けろにも程があるんじゃないですかねえ…」
「二倍三倍当たり前、何でも先ずは言ってみる事だ。意外に無理が通って道理が引っ込まないとも限らないんだぞ。ドリームズカムトゥルー」
テンポ良く会話をこなす彼らは、言い合ってはいるが傍から見ればなんとも賑やかで楽しそうだ。