第4章 ◆入れ替わり事件簿(神田)
「ここは僕に任せて下さい」
「え?」
すると抱えていたアレンが小声でそう告げてきたかと思うと。
「お…落ち着いて、神田っ」
私の腕から抜け出て、苦笑混じりに神田へと歩み寄った。
「じゃれ合ってなんかいませ…いない、から」
…あれ、もしかして私のフリしてくれてるのかな。
あんなビシビシと感じる殺気の塊の人に笑顔で歩み寄れるなんて、流石アレン。
私は怖いです。
「ほら、ご飯食べよう?」
「……」
すると。
笑顔で促すアレンに、背筋も凍る程に感じていた神田の殺気がふっと──…消えた。
……あ。
「チッ」
舌打ちして、大人しく席に着く神田の姿に思わず唖然とする。
あの神田が、アレンの言うこと聞いてる。
それも大人しく。
…凄いな、アレン。
「雪さ…アレンも食べよう」
神田の隣に席着いたアレンが、私のフリをしたまま声をかけてくれる。
あんなに日頃神田とは犬猿の仲なのに、バレないように私を演じてくれてるらしい。
やっぱりアレンは優しいなぁ。
「…はい、」
となれば私もアレンを演じる他ない訳で。
というか今更実は入れ替わってました。なんて神田に言うのも若干怖い訳で。
大量に置かれた料理を目の前に座る私に、向かいに座るラビは苦い笑みを浮かべて、リンクさんは呆れた顔をした。
…致し方ないんです、これは。