第4章 ◆入れ替わり事件簿(神田)
「えっと…ごめん」
「は? テメェには聞いてねぇよ」
追いかけてくれてたのならちょっと悪かったかな、と思わず謝罪が口から漏れれば、冷たい目で返された。
…あ、そっか。
今の私、アレンだった。
…というか。
「話に入ってくんな」
「……スミマセン」
目、すんごく冷たいんだけど。
声も、日頃聞いてるより幾分低い気がする。
何より頭に落とされた鉄拳は、今までで一番痛かった。
アレンはいつもこんな殺伐とした態度取られてたんだね…。
ビシビシと伝わってくる殺気に、思わず何も言えなくなる。
怖いです。
「それより神田! 雪さんに謝っ」
「わーっ!」
「…あ?」
はっとしたアレンが、咎めるように声を荒げる。
その口から私の名前が出たのを耳に、慌ててアレンに飛びついてその口を手で塞いだ。
周りにバレたら一ヶ月このままだからアレン!
「なんでもない、なんでも!」
「…なんでもないならその手を放せ」
必死に取り繕って笑ってみせれば、ギロリと殺気を含んだ目で神田に睨まれた。
怖っ!
「何仲良くじゃれてんだよ、さっきから」
「ひっ」
拳を握って殺気だった目を向けてくる神田に、思わずアレンを押さえたまま数歩後ずさる。
アレンの体、力あるなぁ。
簡単に自分の体を抱えて移動できたよ。
…って感心してる場合じゃないから私。
「ユウくらいなら、言ったっていんじゃね? 多分」
「全く…こんな状況でも顔を合わせると喧嘩になるんですね、貴方達は」
机に頬杖つきながら、完全に傍観者となったラビが適当なことを口走ってくる。
その隣で呆れ混じりに溜息をつくリンクさんも、完全なる傍観者。
あ、助けてはくれないんですね。
ですよね、怖いですもんね。
というか喧嘩違うから!
一方的に神田が私に殺気ぶつけてるだけだから…!
ラビもテキトーなこと言わないでよ!
バレたらバレたで、絶対怒られるから!
絶対に一発は殴られると思う。
今まで神田ユウという人間からの理不尽な暴力を受けてきた、経験者故の直感です。