第13章 ※◇◆Summer to spend with you.
「それが変なことって言うんさ?」
「だから言ってるんだけど?」
続く押し問答につい腕を離して視界を開けば、見下ろす赤毛の青年は変わらず南の前にいた。
見下ろしてくる顔はふざけているようには見えない、真面目なもの。
「別に変じゃねぇだろ。オレは南が好きなんだし」
さらりと言い切る言葉は、さも当然のように。
以前ラビの口から直接告げられた事実。
わかっていたことだが、改めて告げられると顔はまた熱を持つ。
「南の時間が欲しいってのも、その肌に触れたいってのも、その体を抱きたいってのも、オレには変なことじゃないさ」
「っ…待って、ラビ」
「待たない。わかってんだろ、オレの気持ちなんて。オレは…オレの欲求より南を大事にしたいから、これ以上はなんにもしねぇけど……でも男だかんな。組み敷いて南の体をオレのもんにしたいって普通に思ってるさ」
「わ、わかってる、よ…」
「本当さ?」
疑わしそうに見てくるラビの視線から逃れるように、南は赤い顔を背けた。
ぎこちないその態度に、やがてラビも諦めの溜息を吐く。
「まぁ、それをするのは簡単だけどさ…」
「っ」
「……でも一度っきりなんて嫌だかんな」
触れていた体から距離を取る。
被さっていた体は離れ、岩場に腰を下ろすとラビは唇を軽く尖らせた。
「オレの欲求はもっといっぱいあんの。南のことは全部オレのもんにしたいから」
体だけでは駄目なのだ。
心だけでも駄目なのだ。
彼女の体と心、余すこと無く全てが欲しいから。
赤裸々に吐き出しても、一線を越えることはしない。
恐る恐る体を起こす南に、へらりと腑抜けた笑みを向けてみる。
いつもなら笑うか呆れるかしてくる彼女の顔は、強張ったまま。
やり過ぎてしまったかと一抹の不安が湧く。
「…子供みたいって笑うだろ?」
上手く笑えなかったかもしれない。
自嘲のようなラビの呟きに、南はちらりと己の体を見下ろした。