第13章 ※◇◆Summer to spend with you.
「ちょっ───んッ」
くい、とラビの指が南の首の水着紐を引っ掛ける。
ずらして晒した皮膚の上に押し付けられた唇に、ぴりりと今までにない感覚が走った。
思わず硬直する南の体を抱いたまま、ざばりと岩場に上がる。
易々と南の体を陸地に横たえると、ラビは肌に唇を寄せたまま覆い被さった。
「待ってラビッ」
アジア支部に向かう途中で、ノアであるティキ・ミックに襲われた時とは違う。
あの時は恐怖と嫌悪しか感じなかったが、相手がラビというだけで心臓は煩く騒ぐ。
皮膚に触れる唇が、体を捕える腕が、濡れて張り付く赤髪が、この先の出来事を示唆しているようで。
くらくらと目眩のようなものを感じながらも、南は首を振った。
「いくらなんでも洒落にならな──」
「できたっ」
「………は?」
押し返そうとすれば、ビクともしなかったラビの体が動いた。
ぱっと上がる顔には満面の笑顔。
いつもと変わらない彼の笑みに、ぽかんと南も間抜けな声を漏らしてしまった。
まるで悪戯が成功したような子供のような笑顔ではなかろうか。
「しっかり付いたさ」
「付いたって何が……あ。」
見下ろすラビの隻眼の先を追えば、そこは先程ラビに紐を引っ張られた箇所。
冷えた白い肌にほんのりと咲く、小さな赤い花弁。
どうやらぴりりと感じた感覚は、これが原因だったらしい。
「これで南はオレのもんさな」
花弁の後を親指の腹で撫で付け、嬉しそうに笑う。
やっていることは随分と成人向けな行為だが、反応は随分と子供らしい。
そんなラビのギャップを感じると、顔を赤らめつつも南の体から力が抜けた。
「何、それ……もう…吃驚したじゃん…」
「なんさ?」
「…変なことされるかと思った…」
目上に置いた腕で視界を隠す。
充分変なことはされた気もするが、予想していた結果とはならなかった。
安心はしたが、まだ顔の熱は冷めやらぬまま。
ぽそぽそと返す南を見下ろしたまま、ラビはあっけらかんと言い切った。
「変なことなんてしねぇよ」
「…してたでしょ、少しは」
「してねぇっての」
「いやいや。何を言うかな思いっきり押し倒しといて」