第4章 ◆入れ替わり事件簿(神田)
「にしても…自分に自分の世話されるのって、変な気分ですね…」
「そう? でも自分の姿な分、遠慮なくできる気がするけど」
「って近い近い。近いさ二人共っ」
自分の姿だからこそ、恥ずかしさなんてまるでない。
大急ぎで食べるから乱れた自分の…中身はアレンなんだけど。とにかくその髪の毛を、手櫛で整えてあげる。
少し照れたように笑うアレンに、そうかなぁと笑顔を返していると、ラビが焦ったように手を振ってきた。
何。
別に自分の顔だから、近くで見てもどうとも思わないけど。
ゴィンッ!
その瞬間、目の前で火花が散った。
「あ!」
「げっ!」
「ッッ~…!?」
急に頭にきたとてつもない衝撃。
チカチカと目の前で散る火花に、悲鳴も上げられずに頭を押さえて悶える。
い…ぃ、痛い…!!
「何するんですか神田!」
「うっわ、すげー重い音がしたさ…」
「思いっきり入りましたね」
「ァあ?」
荒げるアレンの声(今は私の声だけど)と、ラビとリンクさんの声と──…それから聞こえた、低ーいドスの利いた声。
もしかして、今の衝撃って…
「テメェこそ何モヤシ野郎に甲斐甲斐しく世話されてんだよ、阿呆」
「ぁたっ!」
チカチカと火花散る視界の中なんとか見えたのは、べしっとアレンの頭(今は私の…ああややこしい)を叩く姿は美形、中身は暴君の姿。神田だった。
「…あれ?」
「あ? なんだ」
「…いえ…」
叩かれた頭を擦りながら、不思議そうに神田を見上げるアレン。
その目に訝しげにしながらも、神田は持っていた食事のトレイを机に置いて腰掛けた。
私と、アレンの間に。
「…お前医務室行かなかっただろ」
「え? 医務室?」
視線は目の前の蕎麦に向けたまま問いかける神田に、アレンがきょとんと首を傾げる。
げ、そうだ。
アレンと入れ替わる前に、神田と一悶着あったんだっけ。
医務室に行かなかったことを知ってるってことは…もしかして追いかけてくれてたのかな。