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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第13章 ※◇◆Summer to spend with you.



「私は、ユウと遊びたかっただけなのに…」



雪の剣幕は一瞬だけだった。
すぐに萎んでいく覇気のない声。



「なんだっていいよ、夏らしいことじゃなくても。ただ一緒に楽しいこと…したかっただけ」



つり上がっていた眉尻が下がる。
胸元に掌を当てたまま、雪は俯くと微かに声を震わせた。



「なんで、それくらい…つき合ってくれても……ユウの馬鹿」



ぺちりと、力なく雪の手が神田の胸を叩き返す。
俯いた顔から表情は読み取れない。
浮かぶ不安感に、思わず神田の手が伸びた。



「ちょいと待て」



しかし雪に触れる前に再びその手は弾かれた。
今度は本人の手ではなく、雪の周りを固めた筋肉の塊に。



「神田さんよォ…エクソシスト様かなんだか知らねぇが、何うちの雪を泣かしてくれてんだ?」

「あんたらの仲は知ってるが、これは見過せねぇな。ああ見過せねぇ!」

「うちの雪を幸せにできねぇってんなら、首洗って出直して来いや!」



まるでチンピラの如く。
アアン!?と語尾も上がり調にメンチを切るファインダーズ。
元々、冷酷非道と言われる程に冷たい態度をファインダーに対し貫いていた神田は、彼らの中でも不評だった。
まるでその不満が爆発したかのように、雪を触らせまいと汗で煌めく筋肉でガードを固める男達。



「大体、前々から気に入らなかったんだよ。あんたの雪に対する態度!」

「そーそー!俺らをモノみたいに扱いやがって…!」

「オレらは人間だってんだ!」

「命ってもんをわかれー!人権を尊重しろー!」

「そーだそーだ!」



まるで何処ぞのデモの如く。
"命を大事に"とでも書かれた看板を掲げそうな勢いで、各々が拳を振り上げる。
いつもなら、そこまで言わなくても、と止めに入るのは雪の役目だった。
しかし彼女はファインダーズに守られた囲いの中で押し黙ったまま。
それだけ雪の心を傷付けたのは事実なのだろう、神田はぐっと唇を噛むと───



「言いたいことはそれだけか…?」

「「「ひっ」」」



ゆらりと殺気立った気配を滲み出しながら、眼孔を開いた目でデモ隊を睨み付けた。

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