第13章 ※◇◆Summer to spend with you.
「ビーチフラッグやってんだ、賭け付きでな!雪もやろうぜ!」
「また賭け事?本当皆好きだね。でも私はパス」
「なんでっすかー!雪先輩が参加するなら絶対オレそっちに賭けるのに!」
「雪の腕っ節は男に負けねぇからなー」
「なーやろうぜーッ」
「そんな汗キラッキラ輝かせて言われても、筋肉に押し潰されるの目に見えてるから。何腕っ節って、ビーチフラッグって速さ競うものじゃないの?絶対なんでも有りなルールでしょ」
「よくわかってんじゃんか」
「その方が面白いだろ?」
あっけらかんと言い切る彼らは爽やかな笑顔。
ファインダーが筋肉馬鹿と科学班辺りから言われるのもわかると納得しながら、それでも彼ららしいと雪もまた笑った。
「だからしましょーよー先輩もー」
「えー、別のことしようよ。海行かない?」
「海にも勿論入っからよーなぁ雪」
「あーハイハイ。わかったわかった、なら私は見学──」
「雪」
彼らの下へと向かう雪の足が止まる。
引き止めたのは神田だった。
「…何?別に無理に参加しろとは言わないよ」
振り返った雪の顔に、つい先程まで浮かんでいた笑顔はない。
そんな彼女の変わり様に、神田も顔を渋める。
「そんなこと聞いてねぇ。そうじゃなくて、お前」
「だからユウも私に文句付けないで。私も文句言わないから」
「何言ってんだお前。そうじゃなくて、俺は」
「もう、煩いな。無理に誘って悪かったってばッ」
完全なる拒絶だった。
伸ばす神田の手を振り払う雪に、流石に苛立ちを覚える。
まともに話を聞かない雪は、明らかに神田だけに対して拒絶を見せていた。
これでは取り付く暇もないと、神田も苛立ちで声を荒げた。
「おい!話を聞け!」
「ユウは聞かなかったでしょ!」
しかしそれは一瞬だけ。
返された剣幕に圧されてしまう。
「ユウだって私の話、全然聞いてくれなかったじゃない!それと同じだよ!」
「っ…」
「あーあ。だからそんな態度してると雪に愛想つかれるって言ったのに」
呆れたリナリーの言葉が、ぐさりと神田の胸に突き刺さる。
自業自得とは、正にこのことだろう。