第13章 ※◇◆Summer to spend with you.
「───全く!女の子の体をネタに喧嘩するなんて言語道断!椛の迷惑も考えなさいよね!」
「ご、ごめんなさい…」
「…チッ」
「何?文句でもあるの神田?もう一発頭に入れてあげましょうか?ん?」
「っわ、悪かった、よ」
鋭いピンヒールの先を向けてにっこりと笑うリナリーを前に、正座させられたアレンと神田は青い顔で項垂れた。
流石は教団一のアイドル、彼女の笑顔に逆らえる者などいない。
「いいよリナリー、そのくらいで。アレンは悪くないから。ね、椛」
「う、うん。私、気にしてないよ。神田くんから庇ってくれたんだよね、ありがとうアレ──」
「椛…!」
「わあっ」
「わお。ラブラブですな」
「アレン君、椛のこととなると素直だから」
「言えてる」
恥ずかしそうにしつつも笑顔で許す椛の姿勢に、感極まったのか。
うるりと瞳を潤ませたアレンは衝動のままに白い体を抱きしめた。
その場にいる他の視線にハッとして慌てて体を離すも、その手はしっかりと椛の手を握っている。
なんとも微笑ましい仲ではないかと、雪も頬を緩ませた。
自分の為に、神田を説得しようとしてくれたのだ。
その経緯で起きてしまった喧嘩なのだから、アレンを責めたくはない。
「二人共、リナリーと一緒に遊んで来なよ」
「雪ちゃんは?」
「私は…」
ちらりと後方にいる神田へと目を向ける。
それも束の間、一瞬目が合ったかと思えばすぐに逸らしたのは雪の方だった。
あからさまに外された視線に、神田の眉間に皺が寄る。
「"仲間"と親睦でも深めてこようかな」
「仲間?」
「おーい!雪もこっち来いよ!」
「華がなけりゃあな、華が!」
「ああ、"仲間"ね」
雪が指差した先には、鍛え上げた筋肉を晒し躍動する者達。
肉体派の探索班、通称ファインダーズの男達が汗を振り撒き笑顔も振り撒いていた。
その姿には苦笑しつつも、リナリーも納得して頷いた。
見るだけで暑苦しくなる連中だが、彼らは雪が長年連れ添った仲間達だ。