第13章 ※◇◆Summer to spend with you.
「んだよ、本当のことを言ったまでだろ。無駄なもんを無駄っつって何が悪い」
「ハイ世の女性全員に暴言吐きましたね今。地球に向かって謝って下さい砂に顔突っ込んで土下座して下さい」
「はッ何が世の女性全員だ、巨乳女だけだろッ女は胸が全てじゃねぇよ!」
「誰もそんなこと言ってません、女性に対する態度が悪いってんです。胸も魅力の一つですよ!大きくたって小さくたって!」
「じゃあテメェはあいつの胸が萎んだって平気なんだな!」
「ええ勿論!椛のちっぱいだって愛せます!」
「わぁ。椛、盛大に告られたよ」
「アレンくんんんんっそんなこと大きな声で言わないで…!」
「なんて頭の悪い喧嘩なの…」
リナリーの言う通りだと、海から上がってきた雪もまた呆れ顔で頷いた。
夏の暑さの所為だろうか、喧嘩する時は幼稚園児に成り下がる二人が、更に頭の緩い子供に見えてくる。
真っ赤に染めた顔を両手で隠している椛の迷惑も、気付いていないのだろう。
「どいつもこいつも、胸がでかけりゃなんでも──」
ビシリと椛を指差しながら苛立ちを撒き散らしていた神田の声が、不意に萎む。
その目は椛の胸を捉えたまま、訝しげに眉を潜めた。
「…お前、それ」
「何胸に文句言いながら胸ガン見してんですかッ!」
「ッで!っんの、テメェクソモヤシ…!」
とうとう神田の後頭部に蹴りを入れたアレンに、とうとう神田の堪忍袋も切れてしまった。
忽ちに拳や足や出す暴行に発展した喧嘩に、雪が盛大な溜息を零す。
「はぁあ…やっぱりこうなる。もういいよ、ありがとう椛。リナリー、あの二人止めてくれる?」
「任せて」
「あっリナちゃん…っ」
頷くリナリーの足元が眩い光を携える。
忽ち細い美脚を纏うようにして現れたのは、真紅のブーツ。
イノセンスを発動させたリナリーに椛が慌てて止めようと手を伸ばすも、それは届くことなく。
「喧嘩は、止めな、さいッッッ!!!!!!」
ひらりと跳んだリナリー渾身の飛び膝蹴りが、二人の足場を粉砕した。
否、正しくは砂地である足場に、巨大なクレーターのような穴を開けたのだった。