第13章 ※◇◆Summer to spend with you.
「ねぇってば、神田」
「んだよ…また小言か。話し掛けてくんな、余計暑くなんだろ」
「だったら入ればいいじゃない。目の前に折角涼める場所があるのに」
「お前だって入ってねぇだろ」
「私は一休みしてるの、さっき皆でビーチバレーして汗搔いたから。何処かのぼっちさんとは違うんだから」
「………」
「だから、顔が怖いんだって」
一切此方を見ようとしない神田の眉間には、くっきりと深い溝。
他の感情は余り表立って出さないが、負の感情は安易な程に見せつけてくる。
やれやれと肩を落とすと、リナリーは諦めたように立ち上がった。
「あーもうっ本当素直じゃないんだから!そんなだと雪が──」
「神田くんッ!」
「!?」
ぷるんっと、突如神田の視界を覆ったのは揺れる二つの白い果実だった。
触れそうな程目前に現れた豊満な谷間を前に、流石の神田も反射的に後退る。
視線を上げれば、前屈みで笑いかけてくる椛と目が合った。
「神田くんも一緒に遊ぼうよっ」
「…は?」
「海、すっごく気持ちいいよ!さっきね、イルカも近くで見られたの」
「それほんとっ?」
「うん。リナちゃんも一緒に遊ぶ?」
「うん!いいかな」
「勿論いいよー」
椛の誘い文句に掛かったのは神田ではなくリナリーだった。
大歓迎だと快く迎え入れながら、椛は再び神田へと向き直る。
どうやら話は終わってないらしい。
「神田くんも。ねっ」
「ああダメダメ、神田は石頭の頑固者だから。誘っても無駄よ、椛」
「でも、折角なんだし」
「はぁ…お前らだけで言って来」
「なんで!?こんな所に一人なんてつまらないでしょ!」
「っ!?その無駄にデケェ乳を近付けんな…!」
勢いに任せて前のめりに詰め寄る椛に、揺れる胸が神田の顔に迫る。
僅かばかり顔に朱色を差す神田も、やはり男と言おうか。
「無駄ってなんですか?失礼にも程がありますよ椛に謝って下さい」
そしてそんな神田に過敏に反応した者が一人。
「三つ指ついて土下座ですねホラ早く」
有無言わさない顔で笑うアレンだ。