第13章 ※◇◆Summer to spend with you.
「え、と。どうしました?」
「ど、どう、しよう…」
「何が?海に何かいたん」
「見ちゃ駄目!」
「ぶっ」
何事かと水面に視線を向ければ、ばしゃりと海水を跳ねた椛の手がアレンの顔面を押しやった。
椛らしくないなんとも乱暴な態度に、益々アレンは困惑する他ない。
「な、なんですか一体」
クエスチョンマークを頭一杯に浮かべながら、それでも椛を伺えば今にも泣きそうな顔をしているではないか。
更にぶくぶくと海に顔を沈めていくものだから、慌てて細い腕を掴んだ。
「なんで隠れるんですかっ」
「だ、駄目だってアレンくんっ今こっちに来たら…っ」
「何が駄目なんですか、ちゃんと言って下さい!怪我でもしたっ?」
「違…っ」
「じゃあ何が──」
ふよん、と。
答えは唐突にやってきた。
「?」
なんとも言葉では言い表せない、柔らかな何かが迫ったアレンの腕に触れる。
その感覚には憶えがあった。
まるでマシュマロのような、しかし菓子以上に魅力的なものだとアレンも知っている、とあるもの。
首まで海に浸かってはいるが、透き通るようなアクアブルーは椛の白い肌を水面越しでも主張できた。
白い腕、白い足、白い太腿に、白いくびれ。
そして白い豊満な胸までも。
「な、ん」
「だから見ちゃ駄目って言ったのに…」
じわりとアレンの頬が赤みを帯びる。
泣きそうな声で呟く椛の首には、結んであったはずの水着の白い紐が見当たらない。
「水着…さっきのスライダーで取れちゃったの…」
「っ!」
めそめそと赤い顔を俯かせて嘆く椛の胸は、その小さな手で辛うじて先端を隠しているだけ。
隠しきれないたわわな膨らみを前に、ぼふんとアレンは顔をショートさせた。