第13章 ※◇◆Summer to spend with you.
「ひゃぁああぁあ!?!!!」
「見て見て椛!空が回ってる!」
「無理ぃいいいい!!!!」
ただ一直線に滑り下りていた雪達とは違う。
ぐねぐねと蛇行しながら一回転する様は、まるでベルトのない生身のジェットコースター。
振り落とされないようにと必死に目の前のアレンにしがみつくことが精一杯で、椛は景色を楽しむ余裕などなかった。
やがてスリップするように宙に放られた感覚がしたかと思えば、重力に従い一気に降下。
どぼん!と二つの体が海に深く沈む。
ちり、と足首を一瞬何かが掠めた気がしたが、ほんの一瞬ですぐさま強い力に引き上げられた。
「ぷっは…!」
「大丈夫?椛」
「けほっ…う、ん。塩水、しょっぱ…っコホッ」
水面に顔を出せば、気遣うアレンの声が傍で聞こえる。
塩辛い水を吐き出しながら瞬けば、白髪の前髪を拭うアレンの姿が見えた。
「楽しかったですね、サーカスの大道芸よりスリルあった!」
「そう?アレンくんがそう思えるなら良かっ」
「またやりたいな」
「え」
鼻歌さえ歌い出しそうな笑顔で、椛の手を引くアレンに迷いはない。
いくらエクソシストであろうとも、アレンはリナリーのように空を飛べる訳ではないのだ。
万が一手でも滑ってしまえばベルトなどないスライダーから、外へと放り出されてしまうかもしれない。
「つ、次は少し休憩してからでいいんじゃないかな…」
「僕はまだいけますよ?」
「でも私が──」
胸元に握った掌を寄せながら、なんとか逃げ道を模索する。
と、その脱出法を探し出す前に椛の声は萎んでしまった。
掌から伝わる皮膚の感覚。
直に伝わるそれになんだか心許無いと視線を下げれば、ぎょっと二度目の驚愕。
「きゃあっ!?」
ざぷんと海に潜り込む椛に、握っていた手を引かれたアレンは驚いた。
「椛?ど、どうしたんですか?」
「っぁ、アレンくん…」
「何?」
辺りをあたふたと見渡す椛は明らかに態度が可笑しい。
何かあったのかと慌ててアレンが近付けば、同等の距離を取り後ろへと退く椛の体。
「…椛?」
逃げられた気がしたのは、気の所為だろうか。