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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第13章 ※◇◆Summer to spend with you.



「うわあ凄い眺め!真っ逆さまに落ちそうですね!」

「ァ、アレンくん…そういうことあんまり言わない方がいいんじゃ…本当に落下しちゃうよ」

「そう?…もしかして椛こういうの怖い?」

「怖くないよっ」

「そうですか?」



きょとんと瞬くアレンに、椛は握り拳を作って頷いた。
その勢いに多少押されつつ、遊び心が勝ったのだろう。
すぐにアレンは目を輝かせるとウォータースライダーの入口に向き直った。

アレンの望むまま、ティエドールが造り上げたウォータースライダーへとやって来た。
雪達が何も問題なく遊んでいる様は見掛けていたから、心配はない。
ないのだが。



「大丈夫かい?椛ちゃん」



ほっと胸を撫で下ろす椛に、背後からこっそりと声を掛けてきたのはティエドールだった。
振り返れば穏やかな顔が微笑んでいる。
優しい瞳だが、眼鏡の奥のそれは椛の思いを見透かしているようにも見えた。



「だ…大丈夫、です」



怖くないかと言えば嘘だ。
しかしあんなに楽しげにしているアレンを前にすると、そんなこと言えやしない。
握った拳を胸に抱いて首を横に振る椛に、ティエドールは深く追求しなかった。
代わりに行ったのは、アレンを呼び掛けること。



「ウォーカーくん。折角だしこっちのスライダーを試してみないかい?」

「え?そっちにもあるんですか?」

「うん。こっちのはシングルじゃなくダブル用でね」

「「ダブル?」」



アレンと椛が首を傾げれば、ほらと促される。
雪達が滑り降りていたものより広い幅の滑り台が、いつの間にか反対側に設置されていた。



「これならお姫様を連れて遊ぶことができるよ」

「…成程」

「おひめさま?」



理解しているのはアレンだけらしい。
その意味を椛が問えば、答えの代わりに手を差し出された。



「椛、」

「うん?」



呼ばれるままに手を握れば、引き寄せられる。



「しっかり掴まって」

「…アレンくん?」



そのまますとんと乗せられたのは、座るアレンの膝の上。
ちゃっかりと定位置はスライダーの入口となっているではないか。

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