第13章 ※◇◆Summer to spend with you.
「ふわー…海にいる皆が豆粒みたく見える」
高い高い植物の蔓の上。
律儀に階段のようなものまで作り上げられた蔓を登り、雪は空の上までやって来ていた。
眼下を見れば、海やビーチで遊んでいる者達がそれこそ豆粒のサイズに見える。
高所恐怖症なら一発でアウトとなる高さだ。
「た、高過ぎじゃないっスかこれ…!?」
「ふふん、私の力作だよ。折角海に来たんだから、遊具の一つもないとね」
「だからって度を越えてますって!」
「チャオくん。これくらいの高さ、ユーくんなら目を瞑ってたって歩けるよ?」
「っで、でも」
「チャオくんも平気で渡り歩けるようにならないと、ユーくんのようなエクソシストにはなれないよ〜」
「これただのお遊びなんじゃ…」
「まさか。ちゃあんと修行の一環として兼ねてるからね。意味のないことなど私はしないよ」
「えぇっ!?そうだったんスか!?流石お師匠様…!」
「そうだろう!さぁチャオくん一緒に遊ぼう!」
「(絶対違う気がする)…マリ。チャオジーってティエドール元帥に溺愛されてるでしょ」
「ああ。あの素直になんでも呑み込む性格が可愛くて堪らないらしくてな…」
「やっぱり」
ティエドール部隊にはついぞいなかったタイプだ。
暴君の如く師にも手を上げる神田と、寡黙で大人しいマリとを比べれば、チャオジーのような素直な性格は可愛く見えるもの。
その愛故にこんな壮大なウォータースライダーまで作ってしまったのだから。
植物でできた巨大遊具は、ティエドールがイノセンスの力を以て造り上げたものだった。
元帥となれば次元が違うと頷ける程、惚れ惚れするような精密な造りである。
急に崩れたりする心配はないだろうが、この高さは確かに滑り落ちるには躊躇もする。
「で、でもやっぱり身の不安が…っ」
「じゃあ私が行く」
「え?」
未知のものに中々踏み出せずにいるチャオジーを元気付ける為にもと、一歩前に踏み出したのは雪だった。
挙手して滑り台の入口に立つ。
確かに目の前には青い空、遥か下にも同等の青い海。
同化した上も下もわからないような世界に飛び込むのは、勇気がないと行えない。