第13章 ※◇◆Summer to spend with you.
「気持ちって…」
「言わなくてもわかるだろ?」
皆まで言わず、さらりと告げる。
その言葉に南の頬の熱さが更に増す。
自惚れではない。
紛れもないリーバーの口から、告げられたことがあるからだ。
その抱えた想いを。
「そんな反応するなよ。っていっつも思ってるんだけどな」
じんわりと頬を染めて黙り込む南に、リーバーは苦笑しかできなかった。
「期待しちまうだろ」
明確な返事は貰っていないのに、その心を攫んでしまったような。
そんな錯覚に陥ってしまうのだから。
(そんな、こと、言われても…っ)
それでも顔が、体が、心が勝手に反応してしまうのだ。
元々上司としての尊敬と、淡い片想いを抱いていた相手。
ラビという存在に目を向けるようになってからは落ち着いていたものの、それは南の中から消え去った訳ではない。
骨張った指先も、透き通るような瞳も、低く心地の良い声も、くしゃりと頭を撫でる大きな手も。
初めて知ったものと、前から知っていたはずのもの。
それら全てが、南の胸を打ち鳴らしてくる。
「はいそこまでー。ターイムアーウト!」
ずびしと二人の間に手刀が振り落とされたのは、正にその時だった。
「一目憚らずイッチャイッチャイッチャイッチャすんのやめてくんね?ただでさえ暑いってーのに焼け死ぬ」
温いビールを片手にずいっとベンチの後方から顔を突っ込んできたのは、明るいオレンジ頭。
その明るさとは裏腹に、どんよりと据わった隻眼が睨むように二人を捉えていた。
「ら、ラビっ?いつから其処に…!」
「最初っからいたけど。ティモシーのマンボウの件からいたけど」
「え。嘘」
「嘘じゃねーしお陰でビール5本も開けちまったじゃねーかガン無視すっからさー!」
「お前、目ぇ据わってるぞ。飲み過ぎだろ」
「煩ぇさはんちょのええかっこしー!南とイチャつくんならオレも混ぜろよ!」
「えぇええ…!ら、ラビ何言っ」
「オレ3Pやだけど南が望むなら我慢する」
「あーハイハイ酔ってるね酔ってますねー!そのお口一旦閉じよう!」
「酔ってねーさ、こんくらい」
「そういうこと言う人は大概酔ってます」