第13章 ※◇◆Summer to spend with you.
「あつっ…はふ、美味ひい。班長、これ凄く美味しいですよっ」
「そうか?あっちの方が料理の種類も豊富だし、皆の所に行って来てもいいんだぞ」
「私は此処にいたいんです。駄目ですか?」
「それは…駄目じゃない、が」
「なら良かった」
「………」
気遣いで提案すれば、心底嬉しそうに南が笑うものだから、なんとなく言葉が続かなくなる。
嬉しいような、気恥ずかしいような、そんなこそばゆい感覚。
「そうだ班長、お酒もありますよっどうです一杯!」
「待て。どっから持ってきたそれ…ってもう一杯やってんじゃねぇか」
「勿論!」
しかしそんな淡い想いも萎むのは早かった。
誰が用意したのか、足元のクーラーボックスからキンキンに冷えた缶ビールを取り出す南の右手には、既に飲みかけのビール。
ふんわりと南が淡い笑顔を浮かべていたのは、アルコールを摂取していた所為か。
思わず真顔で突っ込んでしまう。
「皆も飲んでますよ。ほら」
「このマンボウの肝、すげぇビールに合うわ!」
「っはー…天国だなココ…」
「俺次ウイスキーにするー」
「…相変わらず飲ん兵衛だらけだな、この職場は…」
南が指差す先は、バイキングを楽しんでいる団員達。
各々の手にはさも当然のようにアルコールの入った缶やらプラスチックコップやらが握られている。
科学班は元々何かとあれば飲み会を開く酒好きな職場だったが、ほろ酔いでどんちゃん騒ぎをしている様は海であろうと教団であろうと変わらない。
そしてその中でもあまり進んでアルコールを摂取しないリーバーは、その度に周りを介抱する役目に回るのだ。
「潮風の気持ち良い夏の浜辺で、冷えたビールで喉を潤すなんて最高じゃないですか。一緒に飲みましょうよ」
「…ったく、仕方ないな」
それでもアルコール嫌いな訳ではない。
誘われる謳い文句は確かにそそられるもので、南に進められるまま、苦笑混じりに缶ビールを受け取った。
プルタブを弾けば、ぷしりと小気味良い音で泡が立つ。
「「乾杯」」
かちりと軽く缶を重ねた後、そのまま喉に強い炭酸を一気に流し込んだ。
太陽の熱で火照った体に、冷えた刺激が浸透していくのを感じる。
思わず美味いと呻りたくなるような気持ち良さだ。