第13章 ※◇◆Summer to spend with you.
「マーくんやチャオくんも一緒だよ〜。楽しいよ〜」
「師匠、それくらいの誘いじゃ神田は来ませんよ」
「そうなんスか?俺、神田先輩と遊びたかったけどなぁ…」
ほらほらと呼び掛けるティエドールの傍らには、彼の弟子であるエクソシストのマリとチャオジーの姿。
確かにそれで神田は釣れやしないだろう。
「(あ。)…ユウ」
「なんだよ。俺は行かな」
「私、ちょっと行ってくるね」
「…は?」
しかし。
「ティエドール元帥!私、お供してもいいですか」
「やぁ!嬉しいねぇ大歓迎だよ」
「おい、何言って」
「ユウは休んでていいよ。ちゃんと戻るから」
「雪!」
どうやらその餌は雪には有効だったらしい。
パラソルの下から身を乗り出すと、神田の制止も聞かずにティエドールの下へと駆け出した。
「雪ちゃん、その服は脱がなくていいのかな?」
「はい、これも水着の一部のようなものなので。駄目ですか?」
「駄目じゃないよ、うんうん。可愛いよねぇ、チャオくん?」
「えっ!?俺っスかっ?え、ええ…と…は、ハイ」
「本当っ!?」
「うわっ!」
急に話を振られ言葉を濁しながらもチャオジーが頷くと、水を得た魚の如く雪が飛び付いた。
がしりとチャオジーの手を両手で鷲掴み、切望の目を向ける。
その姿は神田には見覚えがあった。
ノアであることが教団に漏洩し、故にチャオジーの雪への態度もがらりと変わってしまった後のこと。
以前のような仲に戻りたいと望んだ雪が、何かとチャオジーに構うようになったのだ。
そこにやましい意識はないにしても、見ていて良い気はしない。
雪にとっての餌は紛れもなくチャオジー。
見事に釣られてしまった彼女の姿に、神田は無言で眉間の皺を一層深めた。
「マリさん、神田くんの厳しい目がこっちに向いているのだけれど…」
「自業自得だ。気にするな、ミランダ」
「そ、そう?」
やれやれと肩を下げるマリは、今回ばかりは味方をしてやれそうにないと苦笑を漏らした。
気になるならば追い掛けて来ればいいだけのこと。
受け身なだけでは、彼女の心を捕まえられやしないのだ。