第13章 ※◇◆Summer to spend with you.
「でもこのままでも海に入れるよ、ユウと違って」
「なら入ればいいだろ」
「…ユウは行かないの?」
「面倒臭い」
「でも、折角海に来たのに…」
「なら入ればいいだろ」
「………」
押し問答の繰り返し。
頑なに拒否する神田に、雪の肩が下がる。
海に目を向ければ、楽しげに遊んでいるアレンや椛の姿。
ビーチに目を向ければ、バーベキューに勤しむリーバーや南の姿。
夏の醍醐味を満喫している彼らの姿を見れば見る程、渇望も湧く。
しかしそれは一人では意味を成さないのだ。
(一緒に楽しみたいのに。ユウの馬鹿)
言ったところで素直に従ってはくれないのだろう。
しゅんと落ち込む雪の姿に、流石の神田も無視することはできなかった。
しかしなんと声を掛けるべきか。
普段から他人を気に掛けることなどしない神田に、アレンやラビのような機転の良さは起動しない。
それでもと口を開いた。
「雪──」
「雪ちゃーんっ」
遮ったのは、海から飛んできた穏やかな声。
「ティエドール元帥?」
「………」
二人で追った目線の先は、ゆらゆらと手を振り呼ぶティエドールの姿があった。
一気に神田の顔が渋くなる。
「ユーくんも連れておいでよ。一緒に遊ぼう!」
「…だってよ?」
「嫌だ。絶対行かねぇ」
何かと親のような顔で絡んでくるティエドールに対する、最早条件反射のようなものだろう。
きっぱりと否定する神田に、それもそうだろうと雪も苦笑しかできない。
「すみませんティエドール元帥!ユウは体調が優れないみたいで…っ」
「またまた。面倒臭がってるだけだろう?」
「諸バレしてるよ、ユウ」
「………」
長年師として時には保護者として連れ添ってきたティエドールの前では、建前など無に等しいらしい。