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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第13章 ※◇◆Summer to spend with you.



「好きにしろ」



暑さ故か、いつもより覇気のない声でぼそりと返す。
神田の許しも出たことだと、背後に位置をずらすとさらりと流れる黒髪に雪は遠慮なく触れた。

紫外線を物ともしない長髪は、相も変わらず見惚れる程の美髪だ。
用意したブラシで梳かすと、まとめる位置は変わらずその場で団子を作る。
形が崩れないようにとゴムとヘアピンでまとめながら、きちんと最後には使用されていた髪紐で結び直した。



「できた、すっきり。これなら肩や首に掛からないでしょ?」



後ろから手鏡を差し出せば、じぃっと鏡を覗き込まれる。
反発してこないところ、気に入らない訳ではなかったのだろう。
と、鏡に映っていた神田の目と重なる。
鏡越しにこちらを見てくる彼に何かと首を傾げれば、やがて視線は外された。



「何?まだ暑い?」

「当たり前だろ。こんな直射日光の反射する場所」

「それはその格好だからなんじゃ…」



言わないつもりが言ってしまった。
海に入らずとも楽な格好をするだけ涼しいのに、と思う気持ちが先行したのかもしれない。
すると前を向いていた神田の顔が、雪へと振り返る。
じっと黒い眼が映すは、雪の体。



「お前だって着込んでんだろ」

「あー…それは……うん…」

「んだよ、変な返事しやがって」

「あはは…」



しかと雪の姿を見つめれば、アクアブルーの無地のビキニ。
それだけならば爽やかで涼しげだが、上に一枚シャツを着込んだ姿が目につく。
胸の下で結ばれたシャツの間から覗くビキニは、ちらほらと見え隠れする程度で南や椛程の露出は見せていない。
腹部は大きく晒しているが、紐パンツの上にはこれまた真っ白な短パン。
着込んでいるのは自分も同じだろうと神田が呆れれば、雪は曖昧に笑い返しただけだった。

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