第4章 ◆入れ替わり事件簿(神田)
「ということで、お風呂にでも行こうかな」
「えっ!? い、今からっ!?」
にっこり笑えば、赤い顔したアレンが慌てて阻止するかのように私の腕を掴んだ。
時間帯的に、もう入浴の時間だし。
別に可笑しくはないよね。
「クヨクヨしてても仕方ないし。どうせだから体が元に戻るまで、アレンを堪能することにします」
周りの目を気にして、ビクビク生活するのは窮屈でしょ。
それならもういっそのこと、アレンの人生を楽しんでみようと思います。
決して、リナリーと話して楽しかったからじゃないから。
時々有無言わさない笑顔で怖く見えるあのリナリーが、あんな可愛い恋する乙女になって接してくるのが新鮮でもうちょっと堪能したいなぁとかそんなんじゃないから。
そんなんじゃないから、ええ決して。
「堪能って…雪さん…っ」
「大丈夫、悪いようにはしないから」
「そ、それどういう意味…!」
「おーい。あんまアレンからかってやんなさー」
「逆セクハラですよ」
あんまり赤い顔でしどろもどろなアレンが可愛くて、ついついノってると再びラビとリンクさんに冷ややかに咎められた。
でも落ち込んでるだけなのも、なんか嫌でしょ。
この体で鍛錬するのも楽しそうだし。
折角エクソシストの体になったんだから、堪能したっていいじゃない。
ぐきゅるるる~
すると不意にその場に響く、空腹を示すお腹の音。
………これは…
「…お腹、減った…」
「あ。やっぱアレンの体さな、それ」
「す、すみません雪さん…」
自分のお腹から発された音だと悟ると同時に、凄い空腹感が襲う。
思わずお腹に手を当てて呟けば、しみじみとラビに頷かれた。
どうやら精神は私でも、このエクソシスト一の胃袋を持つ体は健在らしい。
というかアレンは悪くないから。
そんな恥ずかしそうに謝らなくていいよ。